(ライター:hashidate amano)
知らず知らずのうちに、給料から引かれている、税金や社会保険料。
「なんだか今月も給料の振込額が少ないなあ」と何となくは思いつつ、一体どんな費用がいくらくらい給料から引かれているのか、よくわかっていない場合が多いかもしれません。
でも、ちゃんと給与明細書を見れば、何がどれくらい引かれているのか、ちゃんと書いてある場合がほとんどです。
この記事では、そんな給与明細書の見本を見ながら、その中身について解説して行きます。
会社によって形式は違いますが、書いてある内容は共通の場合も多いので、ぜひご自分の給与明細書を改めて眺めてみてください。
ファイヤ君の給与明細書、大公開(解説見本に使います)
前回(第24話)では、社会保険料を決める「標準報酬月額」などの仕組みを教えていただいたわけですが、 そもそも自分が社会保険料を実際どれくらい払ってるのかって、どうやったら確認できるんですか? それが分からないと、高いも安いも分からないですよね。
・年金博士
確かに、国民年金や国民健康保険なら、基本は自分で払うわけじゃから、額も財布の痛みも分かり易いが、いわゆる社会保険料は給与から引かれてしまうから、意識していないと分かりにくい。 しかし、給与から引かれているということは、確認するのも実は簡単じゃ。君は給料の額をどうやって確認しているかね?
うちの会社の場合は、給料日の何日か前に、給与管理システムに給与明細書が表示されるので、それで振込額を確認してますね。 紙に印刷することもできますけど。
・年金博士
じゃろうな。最近では、スマホにデータで明細を送ってくる、というパターンも多いじゃろう。 しかし何にせよ、よっぽどいい加減な会社でない限り、何かの形で「給与明細書」というものがもらえるはずじゃ。 それでは、その「明細」とは何なのか、ということになる。
ああ、基本給とか残業代とか、あと住居手当なんかの内訳が出てた気がしますね。
・年金博士
ならば、「各種控除額」のような欄もあるのではないかな?
ちょっと待ってくださいね。PDFファイルでダウンロードしてあるので(スマホを取り出す)。 ああ、これか。ほんとだ、ありますね。今までは振込額くらいしか見てませんでしたが……。 なんだ、そのまんま「健康保険」「厚生年金保険」って給与から引かれた額が出てるわけですね。
(ファイヤ君の給与明細書)
・年金博士
その通り。実際は、その額と同額を会社が負担しているから、数字を2倍したのが君の社会保険料、ということになる
雇用保険に、所得税に、住民税。 よく見たら、かなり色々引かれてるんですね。 これじゃ生活が大変なのも当然ですよね……。
・年金博士
それ以前に君の給与明細書にはツッコミどころが多すぎるんじゃが……。 君の会社には休日という概念がないのかね? あの深夜残業はどこに消えたんじゃ? FIREの前にすぐに転職考えたほうが良くないかね?
これでも社内ではホワイトな部署なんですよ。上司もいつもニコニコして優しいし。缶ビールおごってくれたりします。 本社の会長室なんか、女子社員が半裸で室長にお酒注がされるセクハラが横行してるって噂ですからね。
・年金博士
そういうのはセクハラではなく、犯罪じゃ。 ……この給与、ちゃんと日本円なんじゃろうな。変な社内独自通貨とかじゃあるまいな。
缶ビールをおごってくれる、ニコニコ優しい上司といえばこれですね。(注:アフィリエイトリンクです)Bitly
給与明細書には、社会保険と税の基本が詰まっている
給与天引きという仕組みの問題点
ほけんねんきん、というこのブログの本題からは少しずれる部分もあるのですが、給与明細書の内容がちゃんと理解できているかどうかは重要です。
各種の公的な負担を、自分で支払うのではなく天引きにすることで、払い忘れが出ることもなく、確実に徴収することができるというのは確かに便利です。
その反面、保険料を払っている側としてははただ何も考えずに、その残額をおこぼれのようにもらっているだけ、という状況のため、値上げされようがどうしようがほとんど気付きもしない、というのではやはり良くありません。
国民健康保険料の徴収率は全国平均で90%程度で、これでも驚くべき高さだとは思いますが(国民年金は70%程度。国保は保険料未納だと保険証を更新してもらえなかったりするのがやはり大きい)、こちらは身銭を切って支払うことになるので、額に対しては敏感になることが多く、値上げされたら役場に問い合わせの一つもしようかという気持ちにもなるでしょう。
天引きはそこを麻痺させてしまうわけです。
通勤手当は「給料」なのか?
ファイヤ君の会社のように、給与明細書の形式によっては「課税支給額」「非課税支給額」と内訳が記載されている場合があります。
これは、通勤手当などの必要経費相当分はいわゆる「給与」ではなく、課税の対象とはならない(上限額あり)ため、分かりやすくするために表示しているものと思われます。
にも関わらず、標準報酬月額の算定においては、通勤手当も「労務の対償」として報酬額に含まれることになっています。これは労働保険料(雇用保険)においても同じ(「労働の対償」として賃金月額に含まれる)です。
通勤手当などは負担した実費を返してもらってるようなものなのに、これを給与扱いというのは不思議な制度だとしかいいようがありません。
通勤距離が遠ければ、社会保険料も上がるということですから(定期券の現物支給でも、やはり給与額に換算されます)
労災保険は扱いが違う
なお、同じ労働保険でも、労災保険料は全額事業主負担のため、給与明細に表示はありません。社員本人の知らないところで、会社が払ってくれているということです。
労災保険は、会社の補償義務を肩代わりしてくれるようなものなので、社員に負担させるのはおかしいということでしょう。
制度がややこしすぎる……。
・年金博士
本題から外れてきたから今回はこの程度にしておくが、各種の手当てや補償金・見舞金などがどういう扱いになるか(給与扱いするかどうか)は制度によってみんな違うから大変じゃ。
みんな、良く怒りませんね……。
・年金博士
いずれは限界がきて、「風の谷のナウシカ」の王蟲みたいに、怒りで目を真っ赤にした人々の群れが、国会議事堂目がけて暴走し始めるのではないかと思うがな。 しかしそれ以前に、君は会社に怒るか、辞めたほうがいいと思うぞ。
FIRE達成を急がなければ……。
アニメももちろん素晴らしいですが、やはり宮崎監督自身の手によるコミック版は歴史的な名作ですね。必読です。 「シュナの旅」も素晴らしい。Bitly※アフィリエイトリンクです。Bitly
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