(ライター:hashidate amano)
みなさんに公平に情報をお届けするのが使命です
・年金博士
家族で一緒に健康保険に入れるのはどんな場合かを前回解説したが、進学で親元を離れた学生さんの健康保険と年金がどうなるかを今回は解説してみよう。
ああ、それは親御さんとしては気になるところですよね。本人はよく分かってなくて平気、というのもありがちですけど
・年金博士
まあ、金のない男子学生なら多少病気になったりしても病院など行かずに、その辺の草を薬草代わりに食っておしまい、というのもありがちじゃろうな。
それ、いつの時代の学生ですか!? どこか特定の県民とか!?
・年金博士
もちろん、か弱い女学生をそんな目に合わせる気は全くないぞ。わしの解説をちゃんと聞いて、健康で楽しい学生生活を送ってくれたまえ。
(だからいつの時代なんだ、って博士にツッコんでたらきりがない……) 性別に関係なく、ちゃんと役に立つ情報をお送りしますのでご安心ください。
まずは住民票を移すのが基本
進学で親元を離れて大都会(とは限らないが)での一人暮らしを始めた場合、住民票を実家に置いたままにする場合も多いと思います。
この場合は健康保険も年金もそのまま親元での加入となりますので、手続きも何もありません。
ただ、こうしてしまうと国民年金のお知らせなども、当然みんな実家に届くことになります。ちゃんと実家から下宿先に送ってもらえばいいのですが、うっかり忘れてしまうと、各種の手続きが漏れてしまうことにもなりかねません。
親が全部代わりにやってくれるから良い、と言って任せきりにしていると社会に出る際などに必要書類がそろわず困ることもあります。(就職直前になって慌てて住所を動かすなどで、話がややこしくなる場合もある)
住民票がなければ選挙の投票もできませんし、独り立ちしたらやはり手続きは自分でやるようにしましょう。
住所を動かすには、元の住所の役所で「転出届」というのを出して、そこでもらえる「転出証明」という書類を新しい住所の役所に持っていくだけです。そんなに難しくはありません。
転出の手続きは、実際に引っ越す2週間前から可能です。
独り暮らしでも、親元の健康保険にそのまま入れる
住民票を移した場合、まずは健康保険をどうするかが問題になります。
どのようになるかは、今まで加入していた健康保険の種類によって変わってきますが、親元の健康保険にそのまま入り続けることができる場合が多いと思って良いでしょう。
社会保険の扶養に入っていた場合
保険証が「全国健康保険協会」発行の青いカードだったり、その他の「健康保険組合」や「共済組合」の名前が入っている場合は社会保険です(似た名前の「国民健康保険組合」はちょっと違うので注意)。
仕送り額がアルバイトなどの収入額よりも多ければ、別居になっても引き続き扶養に入ることができます(アルバイトなどの年間収入が130万円を超えると扶養に入れなくなりますが、これは同居であっても同じ)。
両親の会社などに届出書と在学証明などを提出して、手続きをしてもらうことになります。
保険証の定期的な更新などはあまりなく、最初にもらった保険証をそのまま使い続けられる場合がほとんどです。
ただし、就職して自分で社会保険に入った後に今までの保険証を使ってはいけません。無効な保険証に変わるので、実家に送り返すなどしましょう。
(使ってしまうと最悪、今までの健康保険に医療費の一部を返金しなければならなくなります)
なお、卒業で学生ではなくなった後も、仕送りや収入などの条件がクリアできればそのまま扶養には入れますが、仕送り額の証明などが必要になることがあります(学生ならば仕送りがあるのが当然なので証明不要、という考え方になっている)。
国民健康保険に入っていた場合
「〇〇市国民健康保険」(あるいは「国民健康保険組合」)などと書いてある保険証ならば、国民健康保険です。
国民健康保険は、住民票の住所地で加入するのが基本なので、住民票を移してしまえば本来は今までの保険のままというわけにはいかないのですが、学生の場合はちゃんと特例があります。
通称「マル学」という制度で、大学や専門学校などへの進学であれば、住所に関係なく今までの国民健康保険にそのまま入れます(「マル学マーク」が入るので、保険証は通常交換になります)。
社会保険と違い、国民健康保険には収入や仕送りの条件はないので、その点は気にしなくて大丈夫です(ただし収入が増えると、親元で払う保険料額が上がる)。
手続きは、元の住所で「転出届」を出した時に同時にすることになるので、在学証明書や合格通知書などを持って行きましょう(必要書類は市区町村によって若干異なる場合があります)。
注意点としては、卒業してしまえばマル学の適用は終了してしまうため、そのまま親元の保険に入り続けることはできなくなります。卒業後も扶養に入ることができる社会保険とは、ここは全く違います。
就職で自分の社会保険に入る場合はそちらの保険証を使うことになりますが、就職などをしない場合でも、住所地の国民健康保険に自分で入ることになります。
無効になった今までの健康保険は、すぐに親元に送り返しましょう。もし卒業後も使ってしまうと、やはり医療費を返還しなければならないかも知れません。
住民票を移しても、自分で健康保険の保険料を払う、ってことにはならないわけですね。
・年金博士
新しく住むことになった町の役所の窓口で、学生なのを伝えなかったために、わけもわからないまま自分で国保に入ってしまった、というケースがあるので気を付けておこう。普通は窓口の人が確認してくれるとは思うがな。
国民年金の手続きは20歳未満かどうかによって違う
20歳になる前に進学で引っ越す場合
国民年金に加入する必要があるのは20歳以上の人だけです。そのため、20歳になる前に引っ越した場合は、その時点では手続きは不要です。
20歳の誕生日が近づくと、「日本年金機構」から国民年金加入のお知らせと、「基礎年金番号通知書」(2022年3月までは「年金手帳」)などが送られてきます。
この通知書は、就職の際に会社に提出が必要となる(厚生年金の手続きに「基礎年金番号」が必要)ので、大切に保管しておきましょう。
国民年金保険料については、もちろん払っても良いのですが、金額的に難しい場合が多いでしょう。
学生の場合は「学生納付特例」という、支払いをしなくて済む仕組みがあるので手続きしておきましょう(申請書は年金機構からの通知に同封されます)。
学生納付特例については第16話で詳しく解説しています。
親元に住民票を置きっぱなしにしておいた場合、これらの通知は当然実家に届くことになります。保険料を代わりに払ってもらったり、学生納付特例の手続きを代わりにしてもらえればまだ良いのですが、両親のほうも良くわからずに「学生は年金加入しなくて良いはず」などと思って放置してしまうこともあります。
こうなると未納が発生してしまいますが、滞納の責任はあくまで自分にかかってくることになりますので、注意が必要です。
また、「基礎年金番号通知書(年金手帳)」がどこかに行ってしまい、就職前に慌てて近くの役所に相談に来るというのもよくあるパターンです。しかし、住民票が実家のままだと役所も対応しようがありません(住民票のない人の年金情報までは管理していない)。
この場合は市役所などではなく、「年金事務所」へ相談に行くことになります(年金事務所では全国の年金情報を管理しています)。
ただし、年金事務所では予約が必要になることもあります。急いでいるからと言って特別扱いはしてもらえないので、注意しましょう。
20歳の誕生日よりもあとに引っ越す場合
20歳の誕生日前に、国民年金加入のお知らせや「基礎年金番号通知書」が自宅に届く、というのは同じです。通知書は保管して、学生納付特例の手続きなどもしておきましょう。
引っ越す際の手続きですが、国民年金の登録住所は住民票の住所と自動的に連動するので、住民票さえ移してしまえば、それ以上の手続きは必要ありません。
学生納付特例などの手続きも住所に関係なくずっと有効なので、出し直しの必要もありません。
(ただし学生納付特例は、住所に関係なく年に1回、4月に更新手続きが必要です)
「基礎年金番号通知書」を、新しい住所に持って行くのは忘れないようにしましょう。
なお、住民票を移してから、国民年金の住所が自動変更になるまでタイムラグが発生することがあり、引っ越し後しばらくの間は実家に年金関係の書類が届くことがあります。
これを防ぐには、郵便局にお願いして「郵送物の転送手続き」をしておくと良いでしょう。
(もちろん、年金関係以外の郵便物も転送してもらえます)
・年金博士
就職時の「基礎年金番号通知書」じゃが、会社としては本当は番号さえわかれば手続きできるのじゃが、もし間違っていると厄介なので通知書や年金手帳の実物を必ず出すようにと言ってくる場合が多い。
そう言われて見つからなかったら、そりゃ必死になりますよね。入社前から悪印象だとどうしよう、って心配で。
・年金博士
新入社員が通知書を出さず、「年金には入ってませんでした」とか言ったのを真に受けた無知な会社が、新規で番号を申請をしてしまい、年金番号が二つできるということが昔はあった。これが「消えた年金」の原因の一つじゃ。今はマイナンバーでも管理しておるから、こういうことは少ないじゃろうな。
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