(ライター:hashidate amano)
FIRE(経済的自立による早期退職)などを目指すに当たっては、社会保障などの生活を守る「盾」についての知識も必要です。
公的な保障にどこまで頼れるのか、それが分からなければ準備すべき資産の目標を立てることもできないからです。
この記事では、社会保障と資産運用の関係についてと、その社会保障が今後どうなりそうか、心配な点についても解説します。
自分で積み立ててきたお金をもらうのが公的年金?
あの、本題の前にまたあれなんですが、このタイトル画像、なんか燃えてますよね。この「FIRE」って、僕が目指してるやつと違う意味なんじゃ……。
・年金博士
経済的にゆとりをもって、アウトドアですごす贅沢な休日を、という意味じゃよ。わしもそんな人生を送りたかった……。
紛らわしいな……。まあいいや。 博士、またそもそもの話になりますが、実際のところ社会保障制度って当てにできるんですか? ネットとか見てるとよく出てきますけど、1990年ごろには5人くらいの現役世代で高齢者を支えていたのが、2050年には1人の現役世代で1人の高齢者を支えなきゃならないって言うじゃないですか。 そんなことが、本当に可能なんですか?
・年金博士
答えは簡単、真実は一つじゃ。逃げも隠れもせず、漢(おとこ)らしく言い切るが、「分からん!」。これがわしの答えじゃ。
えええ、「これこれで大丈夫」という返事を期待して質問したんですが。 まあ、年金制度は、働いたりして積み立てたものをもらうのだから、簡単に破綻しないとは思うんですが……。
・年金博士
実はそれも違う。日本の年金は基本的に、現役世代が払った保険料を使って高齢者などに支給する方式じゃからな。
えええええ、やっぱり駄目じゃないですか。じゃあ、あの年金積立金てのは何なんですか? 運用で損したとか、ニュースに良く出てますが。
・年金博士
基本的にはさっき言った通りじゃが、何年間分かの支給予定額はいったん貯めて、運用に回してはいるんじゃ。 この方式には良い面もある。年金積立金が全部吹き飛んでも、年金制度全体の運営必要資金から見ればわずかなものなのじゃ。 いっそ大勝負で、仮想通貨(例えばモナコイン)に突っ込めばいいのではないかと思うぞ。 (※一般人が仮想通貨に投資するのはリスクが高くて危険なので、仕組みに精通している人以外は手を出さないことを強くお勧めします)
(よりによってなぜモナコイン……。この博士、昔人気があった2ちゃんねらーなのかな)
・年金博士
ちょっと上級編の話になるが、社会保障制度の見通しについて、少し説明しておくか。あわせて、資産運用の話にも少し触れておかねばならんかな。 初級の方は何となくそんなものなのかと思って流してくださってもヨシ! じゃ。
(猫系のキャラが好きなだけかも)
保険・年金制度は大丈夫なのか&資産運用の勉強が必要な理由
日本の保険・年金制度は盤石は言えない
実際のところ、日本の社会保障制度は「中負担・高福祉」と呼ばれる頭でっかち状態で、財源が足りないのに支給のレベルはまずまず高く、持続性が危ぶまれているのは事実です。
財源の大きな部分を国債発行に頼っており、「国内で消化されているから財政破綻リスクはない」とはいうものの、大量の日本円を発行(民間銀行が一旦買い取った日本国債を日本銀行がさらに買い取ることによる日銀当座預金の積み増し)しており、財政は大丈夫でも、発行しすぎた日本円の価値が落ちて物価の急上昇を招く可能性も排除できません。
ただ、日本における公的年金や健康保険制度は、財源を税金からのみに頼らず、独自に保険料を徴収するという方式(前回説明した通り、「国民年金」「国民健康保険」も含めて「社会保険方式」と呼ばれる)ので、国債への依存度は比較的ましという考え方もあります。
幸い、日本の年金制度はある程度インフレにも連動するのですが、経済情勢に合わせて連動を抑制する仕組みもあるので完全連動はしないし、円暴落によるハイパーインフレなどという異常事態にまでは対応できないでしょう。
社会保障を補う、自力での生き残りが必要
しかしながら、そのような破滅的事態を前提とせず、常識的に将来設計を考えるなら、社会保障制度がある程度劣化することを前提として織り込みつつ、あとは自力で資産運用などを行って、人生を乗り切るというのが最も安全性の高い、王道的な人生設計ということになると思われます。
つまり、
①基本である社会保障をしっかり押さえる。
②その劣化を見込んで、不足分を想定する。
③想定した不足分を、自助努力でカバーする。
というのが、2020年代における人生設計ということになると思われます。
まあ、若い年代は、人数がそもそも少ないので、さらに人口がどんどん減り続けることがなければ、自分たちの老後を支える現役世代ももうそれほどは減らないでしょう。
一番まずいのは、バブル世代から氷河期世代にかけてで、特に後者は数が多いうえに、就職段階からずっと人生に難航してきた人が多く、史上有数の不利な世代だと思います。
生き残るためにも、ベースとなる社会保障と、それを補う資産運用の勉強を強くお勧めします。
うーむ確かに、いきなり話のレベルが上がった気もしますが……。 社会保険方式の社会保障は100%税金に頼っている制度よりはまだましだけど、今よりも劣化はする覚悟は必要。 でも、まずは今の制度の知識を押さえておくのが基本、そんなところですかね。 でも、博士の世代は、まだまだ有利な年代ですよね?
・年金博士
いや、わしもバブル世代で、同世代の人数が多い「第二次ベビーブーマー」じゃから、油断は出来ん。
若い頃は、「ギャルソン」のジャケットを着て、ホンダ・プレリュードを乗り回していたものじゃよ。助手席はいつも空席じゃったが……。
(てことは、この人実はまだ50代……。もっとおじいさんかと思ってた)
・年金博士
? 何か言ったかね?
公的年金よりも健康保険制度の劣化が要注意?
今の公的年金制度は、前提とする各条件(経済成長率や出生率など)の見込み方が練乳レベルで無茶苦茶に甘い、という問題はあるものの、一応は数十年単位の長期間の運営を前提として財政計算が行われています。
これに比べると、健康保険のほうは非常に場当たり的、目の前の選挙対策で負担増を突然撤回しては、その反動で今度は制度を改悪してみたり、その長い歴史はひたすら劣化の歴史(特に1980年代以降は)と言っても言いすぎではないほどです。
またいずれ、その辺りの歴史についても解説しますが、「公的医療保険が充実しているから、割高な民間医療保険は無駄」という定説は、ちょっと危険なのではないかと、筆者は危惧しています。
病気になってからでも入れます、というタイプはそれこそ割高なこともあるので、民間医療保険の利用についても(あくまで生活レベルを考慮しつつ)、健康なうちに検討すべき余地はあると思います。
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■ 第6話 「国民健康保険と国民年金保険ってどう違うんだぜ?」 博士が基本を解説します。へ
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