(ライター:hashidate amano)
今年(2022年)の10月には、健康保険の医療費についての改正が、いくつか行われます。
そのうちの一つが、紹介状なしで大病院に受診したときにかかる、「定額負担」という割増料金の値上げ(最低5,000円から7,000円へ)です。
医療費の仕組みはなかなか複雑なのですが、この記事では図を使ってざっくりと解説しています。
大きな病院に受診しなければならなくなった時に、参考になる内容ですので、気軽に読んでみてください。
大きな病院で受診すると高くつく?
ニュースで見たんですけど、大きな病院に受診するときの費用が増加する、って本当なんですか?
・年金博士
もう少し正確に言えば、紹介状なしで大きな病院にかかる場合に支払う負担金じゃな。ペナルティのようなものじゃが、今年(2022年)の10月から、これが今までよりも値上がりすることになったんじゃ。
そうなんですね。確かに、大きな病院にいきなり受診しに行ったら高くつく、というのは聞いたことがあります。
・年金博士
国としては、大病院とかかりつけの小さな診療所で役割を分担させたい、という考えがあるんじゃ。そのために、このようなペナルティを作ったわけじゃが、その路線を強化しようということじゃろう。国の資料には「外来機能の強化」と書いてあるがな。
年金制度の改正も「機能強化」とか言ってましたね。
・年金博士
大病院は高度な医療に集中させよう、というのは理解できるんじゃが、いつでも好きな病院で受診できる、という日本の健康保険の原則が崩れつつあるのが気になる。 今回の改正は、医療費の知識がないと理解しにくい内容なんじゃが、ここはひとつざっくりと解説するとしようか。
大規模病院に受診する際の「定額負担」
2022年9月現在、大きな病院(※)にかかりつけ医などの紹介状なしでいきなり受診した場合、医療費の3割負担などとは別に、「定額負担」として最低5,000円(初診時の額。歯科は3000円)が必要ということになっています。
これはあくまで、患者が好き好んで大病院に行った場合(選定療養)、という前提なので救急医療や災害の場合、その地域に他の病院がない、などの場合は徴収されません。
また、5000円というのはあくまで最低額なので、病院が増額することも可能です。
図にすると、こんな感じになります(治療費が1万円の場合の例)。
※ 大学病院など、一般病床200床以上の高度な治療ができる病院(特定機能病院、地域医療支援病院、紹介受診重点医療機関)
2022年(令和4年)10月から値上げされる「定額負担」
2022年10月からは、この「定額負担」の最低額が5,000円から7,000円(歯科は5,000円)に引き上げになります。
これだけならまだ簡単な話なのですが。今回の改正では同時に、「定額負担がかかる場合は治療費(トータル額)が2000円引きになる」という制度が導入されました。
3割負担を計算すると、2000×0.3=600円だけ自己負担額が安くなります。定額負担が2,000円増えて、3割負担が600円減るので、差し引き1,400円の負担増になる、というわけです。
(実際には病院の判断で定額負担の額がもっと上がる可能性がありますが)
なんでこんなややこしいことを? と思ったのですが、図にしてみるとあら不思議、「患者の負担は増えたが、病院の収入は増えない」という不思議なことが起きています。
(治療費を2,000円割り引いて、定額負担を2,000円増やすので差し引きゼロ)
この結果助かるのは、実は健康保険の運営側(保険者)なのです。
保険者としては、治療費の7割分を病院に払わなければならないので、治療費が2,000円下がるとそのお金が浮くのです。
つまり、健康保険の負担分を患者に載せ替える、これはそういう改正なのでした。しかしまあ、複雑なことを考えたものです。さすが官僚はズル賢いですね。
・年金博士
病院としては、定額負担を増やしてもトータルの収入は変わらんわけじゃ。しかし「儲けやがって!」という苦情は病院が引き受けることになる。実際には、2,000円以上引き上げんと割に合わんということになるじゃろうな。
もし僕が病院の窓口で働いてても、これをちゃんと説明する自信ないです……。
健康保険と医療費について学べる記事
■ 記事一覧へ
コメント