(ライター:hashidate amano)
老後の年金受給者に夫や妻などの配偶者がいる場合、その配偶者が65歳になるまでの間、年金額に加算が付くことがあります。これを「加給年金額」と言います。
「配偶者が65歳になるまでもらえる」ということは、年金を受給し始めた時にまだ配偶者が若かった場合、加給年金も長期間もらい続けることもできるわけです。
加給年金の対象となっていた配偶者が65歳になり、自分の老後の年金を受給し始めると、今度は配偶者自身が「振替加算」という上乗せの年金をもらえるようになります。
加給年金に比べると少額ですが、いくらかでも加算があるというのは有利です。
この記事では、配偶者が65歳になる前と後に受給できる、この二つの年金について解説します。
受給し忘れのないように、頭に入れておくことをお勧めします。
2.5次元の配偶者がいても加給年金はありません
・年金博士
グフフフ、そうか、そうか。よく頑張ったな。
どうしたんですか博士(エロ親父丸出しのニヤニヤ顔で)スマホの画面を見つめて。
・年金博士
わしの嫁(※)がな、ついにメジャーな事務所からデビューすることになったのじゃ。赤スパを投げまくった甲斐があったわい。 ※人気VTuberの小鳥遊雪歩
そ、それは良かったですね……。課金がすごいことになってそうですけど。
・年金博士
年金を受給する際にも、若い嫁がおると非常に有利なんじゃ。加給年金という制度があるからな。 今回は、その点について解説しよう。
え? まさかのそういう展開なんですか?! (Vtuberは加給の対象にならないと思うけど……)
加給年金制度はどんな仕組みになっている?
加給年金を受給するための条件とは
「配偶者加給年金」と呼ばれることも多いこの年金は、主に
① 65歳以上の年金受給者が、
② 厚生年金に20年以上の加入歴がある場合に、
生計を維持している配偶者や子供(高校卒業前に当たる年齢の子に限る)の数に応じて、老齢厚生年金に上乗せで支給される年金です。
(①の例外として、65歳未満でも前回解説した「定額部分」が受給できる場合も対象となる。②の条件にも一部例外があり)
加給年金はいつまで、いくらくらい受給できる?
配偶者と1人目&2人目の子(主に高校生以下)がいる場合は、一人につき227,000円が上乗せされます。
さらに配偶者についての加給年金には、受給者の年齢に応じて最大165,800円の加算がさらに上乗せされます。
合わせて390,500円、これが現在の配偶者加給年金の額だと思っても良いでしょう。
この、配偶者加給年金がいつまで支給されるかというと、原則として配偶者が65歳になるまでの間です。
(配偶者が障害年金を受給したり、20年以上厚生年金や共済年金に加入歴のある配偶者が65歳前に老齢・退職年金を受給し始めると、停止になる。2022年4月以降は、その配偶者の老齢・退職年金が在職などのために全額支給停止されていても同様だが、経過措置あり)
ですから、例えば20歳年下の奥さんがいる人は、65歳で年金をもらい始めてから(この時点で妻は45歳)20年間も加給年金をもらい続けることができるということになります。
博士が、「若い嫁」がいると得と言ったのは、こういう意味です。これは、女性の年金受給者に歳下の配偶者がいる場合も同じです。
・年金博士
ちなみに、配偶者の所得(一時的なもの以外)が将来に渡ってずっと高くなる見込みだと(所得650万以上が基準)加給年金の対象にはならんという制限があるのじゃ。
「生計を維持されている」配偶者、っていう条件に当てはまらなくなるってことですね。
・年金博士
人気者のわしの嫁は、わしよりもはるかに所得が高くなる見込みじゃから、そこがつらいところじゃ。
(そういう「嫁」はそもそも対象になりません、って言ってあげたほうがいいだろうか?)
配偶者がもらう年金には「振替加算」が加算される
配偶者が65歳になると、加給年金が「振替加算」に変わる
前記のように、配偶者が65歳に達すると、加給年金の支給は終了となります。
代わって、配偶者自身の老齢年金の支給が始まる、ということになるわけですが、今度は配偶者が受け取る年金に「振替加算」という上乗せ額が加算される場合があります。
65歳未満の妻がいた夫が厚生年金+加給年金を受け取っていた場合、妻が65歳に達した時点で加給年金は終わりとなり、妻自身の年金に振替加算が上乗せで付く、というわけです。
振替加算にも一定の条件があり、、
① 配偶者が1926年(大正15年4月2日)から1966年(昭和41年)4月1日までの間に生まれたこと。
② 配偶者が老齢基礎年金(国民年金)だけでなく、老齢厚生年金や退職共済年金を受け取っている場合は、それらの加入期間を合計して20年(240月)未満であること。
の2点をクリアする必要があります。
※ 他にも、「配偶者が1951年(昭和26年)4月1日以前生まれの場合は、35歳以上(加給を受ける配偶者が夫の場合は40歳以上)の厚生年金の加入期間が、15年から19年未満(生年月日によって変わる)であること」というものもありますが、すでに65歳を大きく超えている世代の話なので、詳細については今回は省きます。
振替加算の額は? いつまで受給できる?
振替加算の額についてですが、加給年金の額がそのまま付け替えになるのかというとそうではなく、こちらも配偶者の生年月日によって変化します。
2022年時点で65歳となる1957年(昭和32年)4月2日以降生まれの配偶者の場合は、年額4万円未満(38,873円)というわずかな額になってしまっています。
(生年月日が遅くなるのに合わせて額は減り、1966年(昭和41年)4月2日生まれの配偶者は振替加算なし)。
39万円の加給年金が、振替で4万円以下になってしまうわけなので、ほとんどおまけのような制度になっているのが現状ですが、これは一生受給できるものなので、トータルでは結構な額になると思います。
※ 本来、加給年金という制度は、配偶者が自分の年金をもらえる65歳に達するまでの生活保障という意味合いがありました。 しかし、年金をもらい始めたとしても、かつての年金制度ではごくわずかな年金額しかもらえない場合が多かったのです。 そのため、引き続き配偶者の年金に加算を行うことで、世帯の年収が大きく減らないような配慮をしたのが、振替加算の制度でした。 しかし、これから65歳になる世代の配偶者は、普通に老齢年金をもらえるはず(あくまで制度上は)ということで、振替加算の制度は段階的に縮小されることになったのでした。
なお、振替加算の支給を受けるに当たっては、加給年金の対象者が65歳になって自分の年金の支給を受ける手続きを行う際に、配偶者(妻が65歳になった場合は夫)の基礎年金番号等を請求書に記入する必要があります。
また、配偶者が65歳になった後に、夫などが加給年金の要件を満たした場合は、別途手続きが必要となることもあります。
・年金博士
加給年金と振替加算については、重要な制度である上になかなか複雑なので、また別の機会にも良くありそうなケースの実例などの解説を行うつもりじゃ。 とりあえず、現役世代の多くにとっては、配偶者が65歳になったら上乗せは終わり、程度に思っておけばよかろう。
(2次元の嫁というのは、ケースとしては全く参考にならないからな……)
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