(ライター:hashidate amano)
老後資金の対策に詳しい一部の人にはよく知られている、国民年金の「付加保険料」。
額は小さいものの、老後の国民年金をたった2年もらえば、支払った保険料の元が取れてしまうという、非常にお得な制度です。
この記事では、その具体的な受給額や利回りについて解説します。
年金を、少しでも有利に受け取りたいという方には、ぜひ読んでいただきたい内容です。
普通預金の金利でハンバーガーは買えない?
・年金博士
わしが貯金している五丼UFO銀行から、定期預金の利子のお知らせハガキが来たぞ。 ハンバーガー代はわしに任せろ!(べりべりと開く)
ほんとですか! マジうれしいです。 (しかし,今時ハガキで通知って。普通はネットで確認だよね)
・年金博士
…………。2円で買えるハンバーガーってあったかの。
利子2円?! もうちょっと利回りのいい銀行に、預け替えたほうがいいですよ。 ネット銀行なら、普通預金で年利0.2%とかのところもありますから(2022年4月現在。あおぞら銀行BANKサービスやauじぶん銀行の「まとめて金利優遇」など)
・年金博士
そう,利回りといえば! 国民年金の制度の中で、「付加年金」というものがあるのじゃ。これが実にお得な制度でな。国民年金の保険料を払うなら、必ず一緒に申し込むべきなのじゃよ。
(格好悪くて,無理やり話を変えたな……でもそれは知りたい) へえ、どんな制度なんですか? それはすごく興味がありますよ!
2年もらえば元が取れる、国民年金の「付加年金」制度
第11話で解説した通り、国民年金の保険料は月額で16,590円(2022年度額)となっています。これは「定額保険料」と呼ばれる、一番ベーシックな保険料です。
国民年金の保険料には減額の制度もあるため、その場合はこの額よりも保険料は下がることになります。
そして、逆に保険料を上乗せして支払う制度というのもあって、これを「付加年金制度」といいます。
付加年金の保険料を「付加保険料」といい、定額保険料(16,590円)に月額400円を上乗せして支払うことができます。
たったの400円ではあるのですが、これを支払うことにより、年金の受給額が年間で200円増加します。もちろん、支払った月数に応じて、この額は増加することになります。
これがどれだけお得なのか,博士に解説してもらいましょう。
400円払って200円増えるだけ? それじゃカフェラテも買えない程度の額じゃないですか。どこが一体、どうお得なんですか? (どうも博士の金銭感覚はおかしいような気がする)
・年金博士
おやおや、金融の知識に自信があるファイヤ君でも、この意味が分からんのかね(ドヤ顔)。 400円払えば、年間に200円年金がもらえる。もしも,毎年200円を10年間もらえば、いくらになるかね?
そんなの簡単ですよ。2,000円もらえますよね。……おや?
・年金博士
投資として考えれば、400円の出資で、10年受給すれば累計2,000円受給できる。つまり,元手の5倍になっておるわけじゃ。 実のところ、2年間受給すれば累計400円で、もう元が取れておることになる。こんなにお得な制度は、そうはないのじゃよ。
年利7%超に相当する受給額を低リスクで得られる
いわゆる国民年金の加入期間は,20歳から60歳までの最大40年,480か月となっています。
もしも,付加保険料を480か月フルで支払った場合、保険料の累計額は480×400円でトータル192,000円となります。
これに対し、受給額は1年間で96,000円。10年間受け取れば960,000円、65歳から85歳までの20年間受け取れば1,920,000円です。投資した元手の10倍、テンバガーという奴です。
まあ、これだけの年月をかければ、投資した元手を10倍にすることは、株式投資などでも可能なレベルではありますが、付加年金は確定給付の制度なのでノーリスクで実現可能なわけです。
ちなみに、20歳からの年利換算で計算すると、10年受給時点(国民年金加入から55年)で年利5.83%、20年受給時点(同65年)で年利7.18%となります。
投資として考えると非常に長期間なので、年率換算だとこんなものになりますが、ノーリスクでこれだけの利回りを叩き出すのがいかに難しいか、投資経験者なら良くわかると思います。
(正確には、付加保険料を掛けている途中や、年金受給開始直後に亡くなってしまう、というリスクがあります。そして、もう一つのリスクについては後述します)
確かに、年利7.18%はかなりの数字ですね。
・年金博士
前回で解説した通り、国民年金本体(定額保険料)については、1か月分の保険料を支払っても、現状では10年以上は受給しないと元が取れない。しかし、付加保険料の部分は2年受給すれば元が取れる。 2つの保険料を組み合われば、保険料全体として元が取れるまでの受給年数を短縮することも可能なのじゃ。次の項目で解説するぞ。
保険料を付加つきで1か月分納付すると、受給額は1,820円増加(年額)
前回の第11話でも解説しましたが、国民年金の保険料16,590円(2022年度額)を一か月分払うと、受給額は1,620円増加します。10年ちょっと受給しないと、現状では元が取れないわけです。
ここに付加保険料をプラスすると、以下の通り元が取れるまでの期間を少し短縮することができます。
保険料額 16,590円+400円=16,990円
受給増加額 1,620円+200円=1,820円
(定額保険料を一か月分支払った場合の年金の増加額=「1,620円」については第11話で解説)
元が取れる受給年数 16,990÷1,820=約9.3年
付加年金なしだと、元を取るのに10年強かかるので、これで半年以上,元を取るまでの期間が短縮できた計算になります。
ざっくりと言うには無理がある細かい計算だけど,これは本当に役に立つ情報ですね。
・年金博士
今回は上級編の内容になってしまったな。 わしも、だてに博士を名乗ってはおらんのじゃ!(ドヤァ)
インフレに対応できない、付加年金の落とし穴
博士がどや顔のところ申し訳ありませんが,付加年金には落とし穴があります。
前回で解説した通り,国民年金本体は物価連動の仕組みがあるため,インフレに備える保険という機能があります。
しかし,付加年金には物価連動はありません。
もしも長年の間に物価が上昇すれば,「見ろ,200万円などごみのようだ!」というくらいにお金の価値が下がる可能性もありますが、それでももらえる年額は固定の200円×支払い月数です。ほとんど意味がなくなる恐れもあります。
そういう訳で、付加年金はあまり若いうちから支払う制度というよりは,ある程度の年齢で経済情勢などを見極めたうえで、利回りを改善させるためにトッピング的に支払うほうが向いていると考えてもいいかも知れません。
まあ、40年分全部足しても計96,000円という掛け金の絶対額を考えると、そこまで深く考えて心配しても仕方ないかも知れませんが。
(でも10万円は大金です!)
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