(ライター:hashidate amano)
一見分かりにくい国民年金免除・納付猶予申請書の書き方。でも、実は重要なポイントは限られています。この記事では、実際に見本を見ながら項目ごとに書き方を解説します。あまり悩まず、割り切って記入しましょう。
なお、一番大事なのはとにかく申請することです。不備なら年金機構から返送されて来るので、それを見落とさないようにしましょう(見落として放置する人が多いのです)。
記事の後半では免除申請などが通る基準の説明もしていますが、これもかなり複雑です。普通は、こんなの覚えなくても大丈夫です。
繰り返しますが、支払いが難しければ、審査で落ちてもいいからとにかく申請してみましょう。
今回は無駄話をやってる余裕がない ?
……てゆうか、タイトル写真の女の人、悩みすぎじゃないですか?! 泣くほど難しいんですか、免除申請って。
・年金博士
そこまでではないが、案外落とし穴が多い。 できれば直接この方に会って、書き方を説明して差し上げたいがそうもいかん(フリー素材なので誰か分からん)。 そこで、こんなに悩まなくて済むように、国民年金保険料免除・納付猶予申請書の書き方について、注意点を解説する。
ちなみに学生免除の申請方法は、下の記事で解説しています
申請書記入時に気を付けるポイント、見本を見ながら解説
では、実際の申請書の見本をもとに、記入時に気を付けたいポイントを少し解説しておきます。 「①」などの数字は、申請書の左側に書かれている項目の番号です。 ①なら、「個人番号(または基礎年金番号)」となります では早速その①番。個人番号というのはいわゆるマイナンバーですが、そちらは書かずに迷わず基礎年金番号を記入しましょう。 ※ マイナンバーを記載した公的書類には、マイナンバーカード両面のコピーか、マイナンバーが確認できる住民票など+運転免許証などのコピーを添付する義務があり、大変面倒です。 年金機構のシステム(WM)も、基本は基礎年金番号で処理しており、マイナンバーを書かれると実は面倒です。これは国の建前のせいでこういう書式になっているだけです。 ⑤ 配偶者氏名 そのまんま、配偶者の名前ですが、住民票が別世帯の場合は⑧の特記事項に配偶者のマイナンバーを書かなければなりません。これは、全額や部分免除、納付猶予申請の場合、配偶者の所得が判定に入るからです。 (住民票が別世帯の場合、現在は配偶者がいるかどうかそもそも分からないので書いてもらう) ⑦ 世帯主氏名 住民票の世帯主のことですが、申請者(被保険者)や配偶者が世帯主の場合は、空欄でOKです。 が、申請者・配偶者以外に世帯主がいるのにも関わらずここを書き洩らすと、年金機構から不備で返送されますので注意。 (返送されたのに気づかず放置して、免除になってなかったという例が多発しています) ⑧ 特記事項 アメリカ帰りみたいな例が書いてありますが、申請年度の1月1日(令和4年度申請なら2022年1月1日)に海外にいた場合は書いておきましょう。所得ゼロで判定されます。 (申請年度については、⑩で解説します。) ⑨ 免除等区分 通常は記入不要で、できるだけ保険料を支払わなくて良い区分で承認されます。 (全額免除→納付猶予→部分免除の順。例えば、全額免除は無理でも猶予や部分免除なら通る所得、という場合は猶予が優先で承認される) ただ、全額免除でも通るが、あえて半額は払いたい(そのほうが受取額は増える)のだという場合などは、「4 半額免除」に丸印などをしてはいけません。 逆に、「4 半額免除」以外の全区分に✕をつけてください。 ○してりゃ普通に分かるだろうと思うのですが、年金機構の事務マニュアルでは、その場合は不備で返送されることになります。 ⑩ 申請期間 これも落とし穴です。免除申請の「年度」は、その年の7月から、翌年の6月までです。 つまり、2022年の6月分を免除申請したい場合、まだ2021年度(令和3年度)なので、ここには「3年度分」と書かなければいけません。 ここを間違えて「4年度」と書くと、7月以降の申請になってしまいます。 6月分も、7月以降も申請したい場合は、年度ごとに二枚申請することが必要です。 ⑪ 16歳以上19歳未満の扶養親族 もしいれば、記入をしておきましょう。承認の所得条件で有利になることがあります。 ⑫ 特例認定区分 ほぼ、失業の特例のための欄だと思っていいでしょう。 前回(第13話)で解説した通り、失業した年の所得は、ゼロとして算定してもらえます。 離職票などの添付が必要(最近は、ここを記入さえしていればマイナンバー連係情報で確認してもらえるという話もあります)ですが、その際にはこの欄にも、失業した人と離職日、雇用保険(失業保険)の有無を記載してください。 (記載なしで離職票のコピーだけつけた場合、また返送される可能性があります) ⑬ 継続希望 失業免除などは駄目ですが、普通に所得がなくて免除になった場合は、翌年度以降も申請なしで自動的に免除(あるいは納付猶予)にしてもらえます。 これを継続免除と言いますが、その利用を希望しない(毎年、免除するかどうか考えたい)場合以外は記入なしで構いません。 ※ 一つだけ落とし穴があり、今年度は「全額免除」が通ったが、翌年度は世帯主などの所得が増えて、「全額免除」は無理だが「納付猶予」なら通る、という場合は自動継続されません(却下となる)。この場合は再申請が必要です。却下通知が来ているか、よく見ておきましょう。 これは、「全額免除」よりも「納付猶予」のほうが不利(年金額が増えない)だから、というのが理由のようです。 「免除じゃなくて猶予ならむしろ払いたかった。勝手に猶予にしやがって、訴えてやる!」となりかねないということです。
落とし穴だらけじゃないですか! これは、よっぽど注意して申請しないと駄目ですね。
・年金博士
いや、実はそうでもない。 不備があったら、年金機構からいとも簡単に返送して来るが、すぐに直して出しなおせば問題ない。 承認されたはずなのに、未納の督促が来る場合は、申請年度を間違って書いている可能性があるから、すぐに問い合わせる。 つまりこんな風に、年金機構からの郵送物は、放置せずに必ず念入りにチェックする、これが何よりも一番重要じゃ。
なるほど。入り口で防御するより、結果見て動いたほうが確実ってことですね。
・年金博士
年金機構は特に不備返送が多い。 役所なら、公務員である職員が職権判断で修正できる軽微な補正でも、非・公務員である年金機構職員にそういう権限はないからな。 今後、役所業務の民間委託が増えれば、全般にそうなるじゃろう。
免除申請等の承認基準(※上級編の解説です)
これは、かなりややこしいです。
以前、某マネー本を読んでたら、「基準は公開されていない」などと滅茶苦茶が書いてありましたが(「中の人などいない!」並みのひどさ)、公開されていないのではなく、知識がないとわけ分からない、というのが正確です。
しかし一応、頑張って載せておきます(年金機構や各役所のサイトには省略した内容しか書いてないので、法令に基づいて補足をしておきます)。
正直、読んでもよく分からない人のほうが多いと思いますので、通るかどうか役場に確認したほうが早いです。
1 基準その1(所得金額のみが条件)
(1)全額免除
申請者(被保険者本人)と世帯主、配偶者それぞれの前年(令和4年度分の申請なら令和3年=2021年)の総所得金額が下の計算式で計算した金額以下であること。
(誰か一人でもこの額をオーバーしていたら承認されない、という仕組みです。以下も同じ)
(地方税法上の扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(※)
(※)令和2年度以前は22万円
(2)4分の3免除
申請者(被保険者)と世帯主、配偶者それぞれの前年の総所得金額から、各種所得控除(医療費・社会保険料・配偶者特別・障害・老人・寡婦・ひとり親・勤労学生等)を引いた額が以下の計算式で計算した金額以下であること
88万円(※)+地方税法上の扶養人数×38万円(老人扶養は人数×48万円、16歳から23歳の特定扶養親族は人数×63万円)
(※)令和2年度以前は78万円
(3)半額免除
申請者(被保険者)と世帯主、配偶者それぞれの前年の総所得金額から、各種所得控除(医療費・社会保険料・配偶者特別・障害・老人・寡婦・ひとり親・勤労学生等)を引いた額が以下の計算式で計算した金額以下であること
128万円(※)+地方税法上の扶養人数×38万円(老人扶養は人数×48万円、16歳から23歳の特定扶養親族は人数×63万円)
(※)令和2年度以前は118万円
(4)4分の1免除
申請者(被保険者)と世帯主、配偶者それぞれの前年の総所得金額から、各種所得控除(医療費・社会保険料・配偶者特別・障害・老人・寡婦・ひとり親・勤労学生等)を引いた額が以下の計算式で計算した金額以下であること
168万円(※)+地方税法上の扶養人数×38万円(老人扶養は人数×48万円、16歳から23歳の特定扶養親族は人数×63万円)
(※)令和2年度以前は158万円
(5)納付猶予制度
申請者(被保険者)と配偶者それぞれの前年(令和4年度分の申請なら令和3年=2021年)の総所得金額が以下の計算式で計算した金額以下であること。
(地方税法上の扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(※)
(※)令和2年度以前は22万円
2 基準その2(特別な事情がある場合)
(1)生活扶助以外の生活保護対象者(※生活扶助の場合は、法定免除Ⅱ)
(2)地方税法に定める障害者または寡婦、ひとり親で総所得金額135万円以下
このどちらかに該当する場合は、どの区分の免除・猶予でも通ります。
役所には、この基準を判定するシステムが入ってるので、いちいち計算してるわけではありません。
なお、申請書の書き方のところで、⑪「16歳以上19歳未満の扶養親族」というのがありましたが、これは部分免除の「特定扶養親族63万円」という基準に影響するので、こういう欄があるわけです。
(20歳から23歳の特定扶養親族は、税金の申告から把握できるので記載不要)。
うん、分からん。
・年金博士
免除申請は市区町村役場でも受け付けているから、考えるよりそちらで聞いたほうが早かろう。年金事務所だと、予約が要る場合があるからな。 しかし、資料作るの疲れた……。
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