(ライター:hashidate amano)
求人に「社会保険完備」と書いてあると、福利厚生のしっかりした職場という感じがします。
でも、「完備」と言われても、実際に何がどう完備なのかは分からない、という場合も多いかと思います。
この記事では、「社会保険完備」の場合に加入することができる公的な保険などについて、どんなものがあるかを解説します。
病気やけが、老後の年金などへの手厚い保障がある、ということが分かれば、より安心して働くことができますね。
働いたら負け、では生きて行けないこんな世の中じゃ
・年金博士
うーむ,ここは時給もいいし,社会保険も完備か。
どうしたんですか博士,ハローワークのサイトなんか見て。
・年金博士
どうしたも何も、仕事を探しておるに決まっておるだろう。 「年金博士」の仕事で生活していけるほど,世の中は甘くないらしい,と段々わかってきたんじゃよ。
(「年金博士」って「仕事」と言えるんだろうか。) ところで,そういう求人なんかを見てると「社会保険完備」っていう表現を見かけることが多いですよね。 これって何がどう完備なんですか?
・年金博士
では、今回はその点について、解説してみるとしよう
「社会保険完備」だと、最大5つの保険がセット
第3話のおさらいにもなりますが、本来の「社会保険」とは、各種社会保障制度の中で、医療保険や年金保険,介護保険,労災保険や失業保険までを含む、非常に広い範囲を含む用語です。
しかしこの「社会保険」という用語は、「健康保険(被用者保険)」&「厚生年金」という意味で使われることが多く、労災保険や失業保険(正式には「雇用保険」)のほうは「社会保険」とは別に「労働保険」と呼ばれることも多かったりします。
しかし、「社会保険完備」として求人している場合、ほぼこの「労働保険」もセットと考えていいのです。とすると、前記の5種類の保険全てに加入するということになります。
というのは、例えば「社会保険」(健康保険&厚生年金)の適用が不要なくらいの短期間の雇用でも、「労働保険」は加入させなければならない、そういう仕組みになっているからです。(特に労災保険は、非常に加入する労働者の範囲が広い)。
従って、「社会保険」が適用されているのに、より適用される労働者の範囲が広い「労働保険」がない、というケースは少ないのです(高齢者などの例外あり)。
会社が労災の届け出をさぼってる、というような場合は例外ですが、これはもし事故が起きたら会社にきついペナルティーがかかります。
・年金博士
ざっくり言えば,会社に勤めて,健康保険組合の名前の入った保険証が発行されたら,「社会保険に入った」と考えてよいだろう。 そしてその場合は、雇用保険などの労働保険もセットでついてくる、と。 保険証に比べるとマイナーじゃが、「雇用保険被保険者証」という証書も実はちゃんと存在する。しかし、使う場面もあんまりないし、みんなどこかにしまい込んで終わり、ということになりがちじゃろうな。
ああ、就職した時に、なんかペラペラの紙切れみたいなのをもらったような……。
・年金博士
ちなみに社会保険加入の場合,健康保険と年金の保険料は給与天引きになるから,給与明細書で判断することもできるじゃろう。 給与明細の見方は重要だから、また別の回で改めてやるつもりじゃがな。 ※(同じ健康保険の組合でも、「国保組合」というものも存在するのが微妙なところですが、今回は触れません。勤め先から保険証をもらう、という点では同じです)
しかし,「社会保険完備」にそこまでメリットってあるんでしょうか? 国民健康保険とか国民年金でも,保険料は別に,自分で払えばいいんですよね。 場合によっては免除申請もできるし,天引きされるよりもいいんじゃないでしょうか。
・年金博士
確かにそういう考え方もある。ただ,社会保険の最大のメリットは,保険料の半額を会社が負担してくれるということなんじゃ。 そのおかげで,国民健康保険とか国民年金よりも保険料が安くなる場合もあるし,たとえ安くはなくても,自分が給与から引かれた額の倍額の保険料が年金機構に支払われていることになるから,年金額の増加幅もそれだけ大きくなるわけなんじゃ。
なるほど,それは確かにお得ですね。会社側の負担は大変そうですが……
・年金博士
大会社で,自前の健康保険組合を持っているようなところだと,独自に医療費の補助制度(付加給付)を作っていたり,社会保険のメリットは大きいんじゃ。 もっとも,そんな余裕のある企業は段々減ってきているとは思うが……。
(参考)社会保険の範囲
「社会保険(狭義)」と「労働保険」が、「社会保険完備」の場合に加入できる保険(健康保険には介護保険もプラス)。
「社会保険」という俗称(狭義の社会保険)の由来?(余談)
先ほども説明した通り、本来の「社会保険」と呼ばれる制度の範囲は非常に広くなっているのですが、中でも厚生年金と(「国民」でない)健康保険が「社会保険」と呼ばれることが多くなったのは、かつてこの二つの制度を所管・運営する「社会保険庁」という役所が存在したことに由来するのではないかと思います。
(国民年金も社会保険庁が所管していましたが、加入や保険料の徴収、年金支給手続きなどの受付事務の多くを、市区町村の窓口が国民健康保険と合わせて担当していたので、市区町村の業務と認識する人が多かったのではないかと思います)
様々なトラブルを起こしたことが政治問題化して社会保険庁は解体され、年金業務は日本年金機構に、健康保険業務は主に全国健康保険協会に移管されて、二つの「非公務員型組織」によって運営されるようになりました。
しかし、あまりに複雑な制度に起因するミスやトラブルを根絶するのは、いまだに容易ではないようです。
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