(ライター:hashidate amano)
いよいよ、マイナンバーカードが本格的に健康保険証として使えることになりました。
国としては、マイナポイントを大盤振る舞いしてまで普及を推し進めようとしています。
では、マイナンバーカードの保険証利用には、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
この記事では、国が言っているメリットについて、問題点をあげて解説していきます。
なお、後半ではマイナポイントの申請方法も解説しています。せっかくばらまかれるポイントですから、この記事で問題点を理解したうえで、ぜひもらっておきましょう。
もう役所では、ほとんどの情報がマイナンバーと紐づいている
博士、この前の母が入院した病院にもポスターが貼ってあったんですが、「マイナンバーカードが健康保険証の代わりに!」っていうの、最近あちこちで見かけますよね。
・年金博士
国が、強く推進している政策じゃからな。マイナンバーカードの普及率を上げて、行政の効率化をやりたいのじゃろう。
でもあれって、何となく怖い気がしますよね。マイナンバーで、受診した病院とか、何でもかんでも分かってしまうようになるなんて。
・年金博士
いや、その心配は意味がないぞ。健康保険の情報とマイナンバーは、とっくの昔に紐づけが出来ておる。 役所が持っておるほとんどの情報がすでにそうなっておるはずじゃ。 あの利用登録というのは、単にマイナンバーカードを保険証の代わりに使うかどうか、その登録をするだけの話じゃ。
え? そうだったんですか?
・年金博士
従って、そんなことを心配するのはもはや手遅れで意味がないんじゃ。 実際にはマイナンバーカードには対応できない個人医院などもまだまだ多いし、マイナンバー受診のメリットは微妙じゃがな。
マイナンバーカードの保険証利用、メリットもあるがデメリットも
実際の所、マイナンバーカードを保険証として利用登録するメリットはあるのでしょうか?
国が強調している保険証利用登録のメリットは、主に以下の通りです。
1 就職・転職・引越しをしても、健康保険証としてずっと使える
これらの事情で加入する健康保険制度などが変わる場合、新しい保険証をもらうまでの間、手元に保険証が無かったり、前の保険証を使ってしまったり(この場合、費用の返還などが生じる場合がある。第6話参照)と言った事態が生じることがあり、保険証としてずっと使えるのなら便利と言えば便利です。
ただ、それはあくまで、マイナンバーカード対応のシステムを導入している病院に受診した時だけの話で、かかりつけの小さな診療所などでシステムが無ければ、今のところ意味はありません。
※ そもそも、マイナンバー受診のシステムを導入している病院では、マイナンバーカードが無くても、健康保険証の番号(記号番号および枝番)を使ってデータを照会する(「オンライン資格確認」)することも可能なので、普通に保険証を使って受診した場合でも、病院は変更後の新しい保険に対して医療費の請求(レセプト振替)を事実上行うことができます。 こうなると、マイナンバーカード利用自体のメリットというよりは、オンライン資格確認システムのメリットと呼ぶべきかも知れません。
2 マイナポータル(マイナンバー利用のポータルサイト)で健診情報や薬剤・医療費の情報が見られる。
どうしても画面上でこれらの情報を見たい、という人にはメリットでしょう。医療費のお知らせは、加入している健康保険から年に何度か郵送などで交付されるとは思いますが。
3 確定申告(電子申告)時に、控除の対象となる医療費のデータが取り込める。
「医療費控除」の申告(またいずれ周辺知識として解説します)は領収書を集めて計算したり、結構大変な作業だったので、これはなるほど便利なようです。
ただ、その「データ」にはちょっと問題があります。あくまで保険診療対象分しか取り込めない(健康保険のデータだから当たり前)ので健康保険は効かない(保険外)が、医療費控除の対象になる費用は別途自分で計算しないといけません。
保険外だが、医療費控除の対象になる、という費用は案外多いので(通院の交通費など)、その把握がちゃんとできれば、という条件付きで「便利になる」とは言えます。
なお、取り込んだデータはあくまで3割負担などの額そのままなので、高額療養費の還付を受けた場合、正確には修正申告が必要になる可能性があると思います。この辺りも引っかかるところです。
(医療費控除の申告の際は、高額療養費の還付予定額を差し引くことになっているし、難病など医療費助成を受けた場合はその分も差し引くことになっている。データそのままでは申告できないことになる)
4 病院の窓口への書類の持参が不要になる
総務省よ、お前は何を言っているんだ? 持参が必要な書類って何のことだ? という感じですが、
これはほぼ、第8話で説明した「限度額適用認定証」のことだと思っていいと思います(あとは70歳~74歳の「高齢受給者証」)。
つまり、マイナンバーカードの保険証利用登録をすれば、「限度額適用認定証」の申請は不要になるということです。
病院はオンラインで、所得などによる限度額のランクを調べて、支払いの上限額を判断してくれます。
これもまあ、メリットがあると言って良いと思います。
5 マイナンバー受診のデメリット、まだまだ保険証は必要
結局のところ、全ての病院などでマイナンバー受診が可能になるまでの間は、保険証はまだまだ必要ということになります。
保険証として使える場合でも、受診の度にマイナンバーカードを常に持ち歩いていて、もしも紛失した時は再発行にかなりの時間がかかってしまいます(役所に手続きに出向く必要があり、カード再発行には一ヶ月程度かかる)。
その間病院に行けないというのでは話にならないため、結局は従来の保険証を使ったほうが安心ということになります。
また、カード内の証明情報(電子証明書)には5年間の有効期間があるため、その期限を過ぎると保険証としては使えません。有効期間が終わる前に、更新手続きが必要になります。
なお、カード自体の有効期間は10年で、こちらももちろん更新が必要です。
自動的に送られてくる、今の保険証のようなわけにはいきません。
あまり知られていませんが、法律上はマイナンバーカードによる受診が基本で、保険証での受診は例外という改正がすでに完了しています。
健康保険の運営者(保険者)側には、保険証の廃止によるメリットがあるからです。
そのため、紙の保険証がいつまで発行されるかは、国の判断一つということになります。
デメリットはあるにしても、利用登録をしてマイナンバーカードの利用に慣れておくほうが安心というのが現実と言えるかもしれません。
※ 2022年10月追記 デメリットとしては、マイナンバーカードでの受診の方が、医療費が高くなるという点がありましたが、非難が多かったためわずか半年で改正されました。 「電子的保健医療情報活用加算」というもので、額は3割負担で月に最大20円程度でしたが、国が普及させようとしているものに協力したら費用が高くなる、というのでは非難が出るのも当然でした。
どうも微妙なメリットばかりですね。運営者側のメリットというのはなんですか?
・年金博士
保険証の更新作業などが不要になるし、最終的には窓口での加入手続きなども、全て自動化することを想定している。 例えば国民健康保険であれば、役場の窓口職員を減員、あるいは廃止してしまうことも可能、というのが、国が考えておる真のメリットじゃよ。
うーん、やっぱりそういう方向ですよね。ところで、利用登録というのは簡単なんですか?
・年金博士
普通にスマホが使えれば、まあそんなに難しいものではない。 スマホやパソコンが無ければ、役場に行けば登録用の機械もあるし、病院でもできる場合があるが、実は他にもやり方があるのじゃ。
保険証利用の登録方法、一番簡単なのはセブン銀行ATM
主に想定されているのは、スマホに「マイナポータル」アプリをインストールし、そこから登録手続きを行う(マイナポータルのトップに、「マイナンバーカードが健康保険証として利用できます」と表示されるので「申し込む」をタップする)やり方でしょう。
他にも、パソコンに非接触カードリーダを接続して、マイナンバーカードをセットし、ブラウザからマイナポータルに入って申し込むやりかたもありますが、これはそもそもカードリーダを持っている人のほうがまれでしょう。
スマホが使える人なら、パスワードの番号を間違えない限りは簡単で(何回か間違えると、役場に行ってロック解除をしてもらわないといけないという悲惨なことになる)、まあ説明不要のレベルです。
一応、国のマイナポータルサイトの解説にリンク張っておきます。
問題は、スマホがない、またはほぼ使えない、パソコンもない、というような場合です。
先ほど博士も言っていた通り、役場に行けば登録用の機械(と言っても、要するにただの廉価ノートパソコンにカードリーダー付けただけのものでしたが)があるので、それで登録するという方法もありますし、病院でも登録可能な場合がありますが、もっと簡単なやり方があります。
セブンイレブンの店舗や、駅の中などにある、セブン銀行のATMを使うのです。
実はあのトップ画面には「マイナンバーカードで手続する」というボタンがあり、そこを押して画面の指示通りにマイナンバーカードをカードスロットに入れて、4桁の番号を入れればそれで終わりです。
ATMでお金をおろすのが可能な人なら、誰でもできますので、これが一番簡単でおすすめ、国も推奨しているほどです。こちらもセブン銀行の公式動画を貼っておきます。
今回は動画までつけてずいぶん親切ですね。 大体わかりましたが、実はかなりの人が気になってるのが、むしろ保険証利用登録するとマイナポイントもらえる、ってところなんじゃないでしょうか? これが最大のメリットなんじゃないかって。
・年金博士
まあ、餌をぶら下げて釣るようなやり方なんじゃが、確かにわしもポイントは欲しい。 どちらかというとポイ活(ポイント活動)の領域で、当ブログの趣旨とはちと違うようじゃが、最後にその点を説明して終わりにしよう。
スマホ決済やクレジットカード利用で使えるマイナポイント
(2022.7.5 実際にやってみたうえで内容を修正)
健康保険証利用登録者分のマイナポイントは2022年6月30日から登録の受付が始まりました。
「マイナポイント」というのは、そういう名前の特別なポイントをもらうというものではなく、自分が使っているキャッシュレスのサービス(電子マネーや、何とかペイとか、クレジットカードなど)で使えるポイントや残高がもらえる、という仕組みです。
例えば、「ざっくりペイ」というあゃしぃ名前のスマホQR決済を普段使っているとして、このサービスでマイナポイントを利用するとします。
まず、スマホに「マイナポイントアプリ」(「マイナポータルアプリ」とは別!)を入れてマイナンバーカードを読み取んで申込みに進むと、登録可能なキャッシュレスサービスを選択する画面が出て来るので、「ざっくりペイ」を選んで、今度はそちらのIDやパスワードなど(マイナンバーカードのパスワードではないので注意)を入れると、登録が完了します。
(各決済サービスのアプリ上から申し込める場合もあります)
すると「ざっくりペイ」の残高にマイナポイント分の額(保険証利用登録だと7500円分)が付与されることになります(早ければ翌日にも付与されます)。
ちなみに中の人は、前回のマイナポイント(前回はまだ、マイナンバーカード取得」の場合のポイントだけでした)はQR決済の「au PAY」に登録しました。
「au PAY」もそうでしたが、マイナポイントに上乗せで、独自のポイント還元も返って来るので、各サービスがどんな独自上乗せを行うのかを見比べてから登録する、というのがポイ活の世界では当たり前だった感じでした。
今回も各サービスで上乗せがあるようですが、前回ほどの大盤振る舞いは期待できないかもしれません(前回とは違う決済サービスに変更することも可能です)。
なお、前回のマイナポイントを上限までもらった人は、今回は「マイナンバーカード取得」でもらえる最大5000ポイント(こちらは、決済サービスを使ったりチャージしたりした額の25%が付与される)はもうもらえませんが、保険証利用登録と公金受取口座登録分のポイントはもらえます。
公金受取口座登録は、「マイナポータルアプリ」などで行うことができます。
(au pay解説ページ)
(pay pay解説ページ)
(楽天pay解説ページ)
※上記のリンク3つはいずれもアフィリエイトリンクではありません。
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