(ライター:hashidate amano)
月額16,590円(2022年度の額)もかかる国民年金の保険料ですが、その1か月分の保険料が将来どれくらいの年金額になって返ってくるのかは、国もあまり詳しくは解説していないようです。
そこでこの記事では、国民年金保険料を1か月払うと老後の年金受給額はどれくらい増えるのか、何年もらえば元を取れるかなどを、インフレ対策という点も含めて具体的に解説します。
どのくらいの額が返ってくるのかを理解したうえで払えば、より確実に将来への備えに取り組むことができますね。
ファイヤ君の質問に、ゆっくり答える博士
・年金博士
ああ,老後の生活が心配じゃ。もっと国民年金を支払わないと……。 (スパイシー肉マシマシバーガー900円をほおばりながら)
そう言えば、国民年金の掛け金って,一か月でどれくらいの額なんでしたっけ。 (老後が心配なら,そんな高いハンバーガーはやめておけばいいのに)
・年金博士
掛け金というか保険料は,一か月で16,590円(2022年度額)じゃよ。これは大金と言っても過言ではない額じゃが、老後を考えれば背に腹は代えられん。 生活を切り詰めてでも、払う覚悟じゃ。
(切り詰めてない……) それで,その一か月の保険料を支払うと,もらえる年金額はどれくらい増えるんですか?
・年金博士
おお、それはいい質問じゃな。それでは,その計算について説明するとしよう。 計算も色々出てくる、ちょっと長めの解説になるが、ゆっくりしていってね!
(最近Y〇UTUBEかどこかで、「ゆっくり実況動画」を見たんだな……今頃になって)
国民年金保険料を1か月払うと、受給額は1,620円増える(年額)
いわゆる国民年金の加入期間は、20歳から60歳までの最大40年、480か月となっています。
その480か月分、まったく未納なしに保険料を支払った場合、65歳からの年金(老齢基礎年金)受給額は年間で777,800円(2022年度額)となり、これが国民年金の最高額です。
これがもし、半分の20年=240か月しか納付をしなかった場合は、年金の受給額も半分になり、388,900円になります。つまり,支払った月数に応じて、年金額は決まります。
では,1か月分の保険料を支払った場合、年金額はどの程度増えるのでしょうか。
480か月の支払いで777,800円ですから、1か月の支払いであればその480分の1、つまりは1,620円の増加ということになります(端数処理後)。
これは年額なので、65歳から75歳までの10年間受給すれば、16,200円もらえることになりますが、それでも支払った保険料額(16,590円)に少し足りません。
つまり,76歳までもらえば、払った保険料の元は取れるという計算になります。
もっとも、そもそもの受給額が毎年物価などに合わせて改訂されるため、あまり厳密に計算しても意味はありません。
大体10年もらえば元が取れる、今のところはそう覚えておいて良いでしょう。
そうか,保険料を支払っても,65歳以降に約10年以上は年金をもらわないと,元は取れないんですね。 なんだか,ほかの投資と比べてもあんまり割がよくないような……。
・年金博士
昔は8年くらいで元が取れたから,段々割が悪くなっているのは事実じゃな。 しかし,保険料を未納のまま放置していると,最悪財産の差し押さえまであり得る。 そもそも今払っている保険料のお金は,今年金を受給している高齢者に回っているわけなので(第5話参照),割が悪いからと言って誰も支払わないと、制度が持たないということにもなるのじゃがな。
それがわかっているのに,博士はいやいやじゃなく,積極的に年金保険料を支払いたくてしょうがないわけなんですね。 奉仕の心を持った国民のかがみというか,立派な心掛けの人だったんですね。見直しましたよ!
・年金博士
わかってくれればよろしい。 ……と,まあ,ほめてもらっておいてなんだが,実はちゃんと損得を計算した上の話なんじゃ。ただ損をするのが分かっていて、高額な保険料を支払う余裕は、わしにはない。公的年金には、他の投資とは違う役目があるのじゃよ。 元を取るのに十年かかるとかいう計算は、あくまで今の経済状況なら,という前提じゃ。 公的年金で対応すべきリスクというのは、今日明日の計算で判断できるようなものではないんじゃよ。そこを最後に解説しよう。
おお、そうなんですね。 何だか今回の博士は、頼もしい感じですね。
・年金博士
「今回は」が余計じゃ……。
国民年金は、将来のインフレリスクに備える保険
2022年現在、世界ではコロナ後の高インフレが大問題になっていますが、日本国内に限っては、まだまだ世界の歴史上でもまれな低インフレが続いています。
物価が上がっていると言っても、まだまだ年率2%程度です(原材料費の高騰を企業が小売価格に転嫁できていない)。欧米のような10%近い数字にはなっていません。
しかし、こんな状況がいつまで続くかは、誰にもわかりません。経済の衰退した国では、慢性的なインフレ状況が長く続くことさえ珍しくないからです。年率10%近い高インフレが襲ってくる可能性もあり得ます。
そうなった場合でも、年金額はある程度インフレ率に連動することになっています(ただしかなりのタイムラグが出ます)。
もしも物価が十年間の間に倍になれば、年金額も倍とまでは言わなくても、かなり増加することになります。そうなれば、数字の上では十年どころか五年で元が取れる可能性もあるのです。
そもそもが、自分で積み立てる方式ではないために支給に終わりがなく、死ぬまで受給できる完全な終身年金です。
繰り返しになりますが、単純に何年で元が取れるかだけ考えても、あまり意味がないかも知れません。
他の投資とは性質の違うもの、と理解して、ある種の資産分散によるヘッジとして公的年金に保険料を支払う、というのが投資の観点から見ても有効な考え方でしょう。
なお、年金額がどのようにインフレに連動するかについては、第34話でより詳しく解説しています。
※ ただし、現行の「マクロ経済スライド」では、物価上昇率よりも年金額の上昇率は低くなり、物価が上がると実質の年金額は目減りすることになります。しかも年金額が増えるまでのタイムラグも大きいので、短期的な対策にはなりません。 2023年以降、その問題が表に出てくる可能性がありますが、全く金利のつかない銀行預金にただお金を置いておくよりは、いくらかでも物価連動する年金のほうがまだましということです。
なるほどなあ。投資の観点からは、そんな風に考えることもできるんですね。
・年金博士
インフレ率を上回る運用成績を出し続ける自信があるなら、保険料を全額免除(収入が少ない場合のみ可。第13話などで解説しています)にしておいて、その浮いた額を投資に回すというのもありじゃと思うが、わしは年金制度を信じるつもりじゃ! (博士の資産運用成績,中国の不動産株で勝負して,目下マイナス70%。こういうギャンブルのような投資はダメ、ゼッタイ)
マンガで読む分には面白いんですけどね、大博打も。ざわ……ざわ…… (中の人は、福本伸行先生がメジャーになるずっと前からのファンです。「天」の東西戦の初期をリアルタイムで読んでいました)※アフィリエイトリンクです。Bitly
年金制度の仕組みが学べる記事
■ 記事一覧へ
■ 第12話 お得度最強? 国民年金の付加保険料について博士が解説へ
コメント