(ライター:hashidate amano)
学生さんが利用することができる、国民年金保険料の「学生納付特例制度」。
「納付猶予制度」と同じく、「保険料を払っていないのに、未納ではない」という扱いを受けることができます。
未納にしてしまうと、いざという時に障害年金がもらえなかったり、大変なことになってしまうことがありますが、それを避けることができるのです。
この記事では、そんな「学生納付特例制度」の内容と、どんな学生さんが対象になるのか(ほぼ大学生や専門学校生です)を解説しています。
読んでみて、それでも「自分は対象になるの?」と疑問が残っても、とりあえずは未納で放置しないで、申請してみましょう。ダメならダメで、年金機構からそう言ってくるだけですしね。
(その場合は、一般の免除や納付猶予の申請を案内されることもあります)
「学生」になるのに年齢は関係ないんだぜ?
ところで、この前の免除制度の解説(第13話)で、もう我々の年代では関係がないけど、と話していた、国民年金保険料の学生特例制度なんですけど。
・年金博士
待ちたまえ、ファイヤ君。いくらざっくりブログだとは言っても、不正確なことを言ってはいかん。 学生に、年齢の制限はない。わしらでも、今から大学に入って、同級生たちにモテモテでウハウハということも可能なのじゃと、そう解説したはずじゃ。
はあ、すみませんね(棒)。 (それを解説とは言わんだろう。しかも、全くどうでもいい)
・年金博士
君、今どうでもいいと思ったじゃろう。 しかし、それは大間違いじゃ。そもそも学生特例を受けられる「学生」とは、という条件につながる部分じゃからな、実は。
ぎくっ。突然そんな真面目な話につないで来ないでくださいよ……。 いや、お聞きしたかったのは、まさにその「学生」の範囲ってどうなってるのか、なんですよ。 僕も大学生の時、申請してたはずなんですけど。
・年金博士
では、学生納付特例制度の内容について、おさらいを兼ねて改めて少し説明するとしよう。
払わなくても未納にならない、国民年金保険料の学生納付特例
第13話と重なる部分もありますが、改めて学生特例制度に絞って、内容を解説します、
「学生納付特例制度」とは、前年(1月~3月の保険料の場合は前々年)の所得が一定の基準以下の場合に、国民年金保険料を支払わなくても良くなる、という制度です。
払わなくても良いと聞くと単純にお得なようですが、払わずに済んだ分、年金の受給額も増えません。
ならば何の意味があるのかというと、支払いの義務自体がなくなるので、督促や差し押さえなどを受けなくて済むという以外に、学生特例を受けた期間は老後の年金(老齢基礎年金)の受給資格期間に算入される、というメリットがあります。
そもそも、老後の年金は保険料を10年以上支払わないと受給資格ができません(=もらえない)。その「保険料を払った期間」に、学生納付特例を受けていた期間が含まれるのです。
極端な話、10年間ずっと学生を続けて、1円も保険料を支払わなかったとしても、年金の受給資格は出来るという理屈になります。
ただしそれだと支給額はゼロなので、現実的には受給者にはなれません(ちなみに、一ヶ月でも払っていれば、それに応じた額=年額約1,600円が受給可。)。
あとのメリットは、
・本来2年分しか遡って支払うことのできない国民年金保険料を、10年間さかのぼって支払える
・「障害年金」の受給判定において、未納期間があると不利になることがあるが、学生納付特例期間はあくまで「未納」ではないため、不利にならずに済む
という点が挙げられます。
ですよね。 そこまでは、僕も以前の解説で理解したんですが、しかし「学生」ってどこまでを含むのか、それが気になって来て夜もなかなか眠れないんですよね。 21時以降にならないと眠くならないくらいで。
・年金博士
君は一体、何時間睡眠を取らんと気が済まんのかね……。それに、大学生だったのなら、問題なく学生特例の申請対象になっていたはずじゃ。心配いらんよ。 まあ昔は、地下鉄の車両をどこから地下に入れたのかを考えると眠れない、という人もいたくらいじゃから、世の中色んな人がおるがな。
春日三球・照代「地下鉄漫才」※アフィリエイトリンクではありません。
大学生や専門学生ならほぼOK、学生納付特例制度の対象者
年金機構の解説によると、
「学生とは、大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校及び各種学校(※)、一部の海外大学の日本分校(※)に在学する方で夜間・定時制課程や通信課程の方も含まれますので、ほとんどの学生の方が対象となります。」
とありますので、大学生や専門生は大体大丈夫、となるのですが「※」が気になります。
一番手っ取り早いのは、日本年金機構のサイトには「対象校一覧」のページがありますのでそちらを見ることです。
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/gakutokutaisyouko.html
ただ、ここに載ってるのは各都道府県ごとのエクセルのデータなので、ダウンロードして内容を見られるアプリ等は必要です。
(エクセル開く程度なら、365なんぞ買わんでも、とりあえず互換ソフトや無料のオフィスでも充分とは思います ※アフィリエイトリンクです)
この制度の解釈、本気で追求し始めるとかなり難しく、それこそ夜も眠れないという非常に細かい話になってきます。
ここは一つ、ざっくりブログとしては全然ざっくりじゃないのですが、法令の規定をそのまま引用しておきます。
法学部の学生さんや、社労士取ろうとしてる人以外、次の博士の解説まで読み飛ばしてください。(載せといてなんだ、って話ですが)
国民年金法施行令 第6条の6 一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第四十五条に規定する中学校(夜間その他特別の時間において授業を行うものに限る。)に在学する生徒 二 学校教育法第五十条に規定する高等学校に在学する生徒 三 学校教育法第六十三条に規定する中等教育学校に在学する生徒 四 学校教育法第七十二条に規定する特別支援学校(同法第七十六条第二項に規定する高等部に限る。)に在学する生徒 五 学校教育法第八十三条に規定する大学(同法第九十七条に規定する大学院を含む。)に在学する学生 六 学校教育法第百八条第二項に規定する短期大学に在学する学生 七 学校教育法第百十五条に規定する高等専門学校に在学する学生 八 学校教育法第百二十四条に規定する専修学校に在学する生徒 九 学校教育法第百三十四条第一項に規定する各種学校に在学する生徒(修業年限が一年以上である課程を履修する者に限る。) 十 前各号に規定する教育施設に準ずるものとして厚生労働省令で定める教育施設に在学する生徒又は学生 いわゆる夜間や通信制中学・高校の学生さん(国民年金なので20歳以上60歳未満に限られますが)に始まり、「各種学校」や大学ではない「大学校」の一部に至るまで非常に広い範囲の学生さんが入っています。 というのも、この「第十号」の規定がかなりあいまいで、「前各号に規定する教育施設に準ずるもの」の解釈が色々考えられるからです。
・年金博士
まあ結局は、普通に大学とか専門とかに行く場合は大体行けるじゃろう、ということになる。 上記の対象校の一覧データを見るか、後は申請する窓口で聞くことじゃな。これが一番間違いがない。
こんなに細かく解説したのに、結局は役所で聞きましょう、ってことですね。
・年金博士
役所や年金機構の職員さんも、上のデータ見て答えるわけじゃからな。 まあ、学生さん向けということで、ちょっと難しい内容にしてみたが。もし法学部なら、これくらいは読めんとな。
博士、法学部だったんですか?
・年金博士
さて、今回はこれで終わりじゃ。 次回(第17話)では、申請書の書き方を解説するぞい。
(無視された……)
判断があまりに難しいケースも(上級向け補足)
ちなみに、ファッションの世界などでは有名な「バンタンデザイン研究所高等部」、ここを年金機構のデータで検索しましたが名前が出て来ませんでした。
ここは入学しても「学生」とはみなされないようです。
どうも、バンタン(カドカワ傘下みたいですね)は学校法人格を有しない、営利企業による経営ということで、前記の規定に該当しないようなのです。高卒資格を取れますとありますが、同じ角川系の高校が行う通信教育を併用するようです。
この場合は、そちらの高校の学生として、申請できる?
実は仕事の関係で必要があったので、某特別区の担当部署に電話して聞いてみたのですが、やはり「そのデータでしか分からない」ということでした。
学生特例申請を受け付ける、区役所などの現場でも相当混乱があるのだろうなと思います(一般免除や猶予に通ればそれでもいいのですが、所得の条件が違うので)。
役所系の制度は、なかなか時代の変化にはついて行けませんね……。
さらにですが、ただ対象校に通っていればそれで「学生」かというと、そうも限りません。
たとえば留学生も、「研究生」などではなく、単位取得できる正規留学生であれば対象となりますが、正規留学生になる前に、大学に併設された日本の文化や習慣ついて学ぶセンターに一定期間通う場合は対象とならない(正規学生に転換してからは可)など、細かく突き詰めればきりがありません。つまり、どの学校に通うか、だけでは判定が出来ない場合もあるわけです。
結局、博士の言う通り、窓口で聞いてみるしかありません。
実務上は、即答してもらえず、とりあえず学生以外の免除と両方の申請出してみて、年金機構の審査を待つ、というケースもあります。
国民年金保険料について学べる記事
■ 記事一覧へ
■ 第17話 年金保険料の学生納付特例申請書の書き方、注意点についてへ
コメント