(ライター:hashidate amano)
産前・産後休業や育児休業中の妊産婦さんには、社会保険料や国民年金保険料が免除される制度があります。
社会保険か国民年金かで内容は大きく違いますが、免除を受けても老後の年金額が減額されない、という有利な制度になっている点が共通しています。安心して適用を受けましょう。
なお、育児休業中の免除については、もちろん男性も適用を受けることができます。
お子さんが産まれるご家庭のみんなに関係のある記事となっていますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
博士やファイヤ君には適用されない免除制度?
・年金博士
さて、ここまで各種の国民年金保険料の免除や猶予などの制度を説明してきたが、実はもう一つ、わしやファイヤ君には受けることができないこともある免除制度があるのじゃ。
博士や僕限定? どういうしばりなんですか、その制度は?
・年金博士
分からんかね、君もわしも漢(おとこ)じゃ。 ……じゃよね? 実は……とかないよね。ショートヘアにはしてるが、とか……。
急に、変な目で僕をじろじろ見るのはやめてくださいよ。 博士と同じってことで大丈夫です。
・年金博士
……そうか。そりゃそうじゃな。
なんでがっかりしてるんですか……。
・年金博士
まあ、つまりはそういうわけじゃよ。女性限定、つまり出産時の産前・産後休業中に適用される免除制度、というものがあるのじゃ。 この免除制度は、珍しいことに社会保険(厚生年金&健康保険)にも存在する。というか、そちらのほうが国民年金よりも先に出来たんじゃがな。 社会保険には育児休業時の免除というのもあるので、こちらも一緒に解説しよう。
全額払ったのと同等、産前産後及び育児休業時の免除制度
博士の説明にあったとおり、出産予定の女性を対象に適用される、保険料の免除制度(産前産後の免除制度)というものがあります。厚生年金&社会保険の健康保険(被用者保険)と国民年金それぞれに制度があり、以下の通りとなっています。
なお、社会保険には育児休業期間中の免除制度もあり、こちらは当然性別は関係ありません。
1 厚生年金&健康保険(被用者保険)
(1)産前産後休業時の免除制度
労働基準法には「産前産後休業」という制度があり、出産予定日前の6週間(多胎妊娠、つまり双子ちゃん以上の場合は14週間)に本人が希望した場合と、と出産後の8週間(6週間経過後で、本人が仕事への復帰を希望し、医師が認めた場合を除く)は、就業をさせてはいけないと定められています。
産前産後の休業期間については、事業主が年金機構に申し出ることにより、被保険者及び事業主の厚生年金・健康保険(被用者保険)両方の保険料が全額免除されることになっています。
この免除期間については、保険料を全額支払ったのと同等の扱いということになっています。(国民年金の全額免除のように、2分の1として計算されるわけではない)
なお、2022年10月から「男性の産休」と呼ばれる制度(子供の出生後8週間以内に、父親が4週間以上の休暇を取れる)がスタートしますが、これは通称で、正式にはあくまで「育児休業」の一種です(産休ではない)。
したがって、こちらの免除制度とは関係がありません。
(2)育児休業期間中の免除制度
育児・介護休業法により、3歳未満の子供を養育するために育休を取った場合も、(1)と同様に厚生年金・健康保険の保険料が被保険者事業主ともに免除されます。
支払った扱いになる、というのも同じです(月の末日に育休を取っている場合、その月の保険料がボーナス分も含めて免除対象となるのですが、2022年10月から改正予定です。この点については最後に補足説明します)。
なお、繰り返しますが、こちらの免除は性別に関係なく適用されます。
2 国民年金(産前・産後の免除制度)
国民年金のほうは、産前・産後に限って保険料の免除制度が存在します(つまり女性限定)。
ただ、休業の取得は特に関係なく、単純に出産予定日(または出産日)が属する月の前月から4カ月間(双子ちゃんなどの多胎妊娠の場合は、出産予定日または出産日が属する月の3カ月前から6カ月間)の保険料が世帯などの所得に関わらず免除となります。
例えば、双子ちゃんなどではない場合で4月出産予定なら(申請時に母子手帳などで予定日を確認します)、その前月に当たる3月から、4か月後の6月までの保険料が全額免除ということになります。
この免除も、国民年金の各種免除制度としては唯一、全額支払ったものという扱いになります。
申請の受付は、出産予定日の6カ月前からで、出産後に申請することも可能です。
もし、保険料を支払ってしまった後に申請した場合は、保険料は還付となります。
なお、出産する母親本人が働いていて、社会保険の健康保険(被用者保険)に加入している場合、出産のために仕事を休んで給料の出なかった分を補助する「出産手当金」という制度もあります。 この内容についても、いずれ解説する予定です。
まあ、妥当な制度ですよね。
・年金博士
国民年金のほうは2019年(平成31)年に出来たばかりの制度で、国としても、子育て支援に力を入れてます、ということをアピールしたかったようじゃ。 全額免除だが、付加保険料の支払いは可能という点でも、非常に異例な制度となっておる(付加保険料だけを支払える、というケースは、原則これだけ)。 デメリットは何もないので、迷わず申請すべきじゃろう。母子手帳の担当窓口で、制度を案内してくれることもあるようじゃ。 なお、次回は続いて健康保険の「出産育児一時金」の解説をする予定じゃ。
2022年10月の改正(育休期間のカウント方法変更)
前述の通り現在は、育休期間中の厚生年金及び健康保険料の免除については、月末時点で育休を取っている場合、その月の保険料が免除される、という取り扱いとなっています。
しかし、2022年10月からは制度改正により、一か月の間に14日以上育休期間がある場合も免除、という制度に変わります。育休期間がたまたま月末をまたぐかどうかで免除になるかどうかが変わる、というのが不公平だとして改正されるものです。
また、ボーナスから差し引かれる保険料については、例え月末時点で育休を取っていたとしても、その育休が1月を超える長さの場合のみ免除となるように、条件が厳しくなります。
これは、育休の取得が、保険料の免除を目的に、ボーナス月に集中するという問題の解消が目的のようです。
国民年金保険料の免除については、元々育休期間は対象とならないので、影響はありません。
先ほどの「男性の産休」もそうですが、2022年は何かと社会保障制度の改正が多く、ネット上の古い情報などが当てにならなくなってくるので、注意が必要です。
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