(ライター:hashidate amano)
国民健康保険料は、前年の収入(所得)によって決まるのが基本的なルールです。
でもそれだと、退職で社会保険を脱退して国民健康保険に加入した場合などは、前年の高い収入額をもとに保険料が決まってしまって、支払えないような場合も出てきます。
そのために、失業した場合などの事情によっては、保険料が減免できる仕組みが色々と作られています。
特に、コロナ禍の影響で収入が減ってしまった場合は、手厚い減免制度が作られていて、保険料が0円になる場合まであります。
この記事では、コロナの影響による保険料減免の仕組みについて、詳しく解説します。
申請期間にも余裕がある制度なので、この記事を読んで「もしかしたら減免してもらえるかも」と思った方は、まず役所で相談してみましょう。
悲惨だったコロナ禍、失業などの被害を受けた場合の救済策は?
長らく続いたコロナ禍も、ようやく少し落ち着いて来ましたね。 感染拡大の初期は、ステイホームとかテレワークとか新しい言葉がいっぱい出てきて、危機感すごかったですけど、予想通り悲惨なことになっちゃって。
(ステイ・ホーム週間CM、80年代風)
・年金博士
旅行にも行けず、家にこもってばかりでみんな辛かったらしいな。 まあ、わしの場合はずっと昔から長年ステイホームを実行してきたから、まだ我慢できたがな。 唯一の楽しみのモ〇スバーガーが閉鎖になったのは困ったが……。
で、失業時の国民健康保険とか国民年金の減免制度については今までにも解説があったんですけど、コロナの影響で生活に困った時の減免っていうのはないんですか?
・年金博士
あるよ。 国民健康保険にも国民年金も、どちらにも減免制度がある。 特に国保のほうは非常に有利になるから、コロナの影響で失業したり、仕事が見つからない場合は必ず相談すべきじゃな。
じゃあ、今回はその「コロナ減免」について、解説をお願いします。
最大で100%減額になる、国保料のコロナ減免
国民健康保険の保険料については第22話や第35話などでも解説しましたが、基本的には前年1年間の収入で保険料が決まってしまいます。
しかし、コロナの影響で失業した場合、当然収入は前年よりも大幅にダウンするので、保険料が支払えないケースが出てきてしまいます。
そこで、コロナによって失業や廃業をしたり、収入がダウンした場合などに、保険料を減額・免除する制度が国によって作られています。
この「免除」というのは、健康保険の制度としては異例の100%の免除で、つまり保険料は0円となります。
国民年金の全額免除の場合は、受給額が減るというデメリットもありますが、国民健康保険の場合はデメリットは何もありません。保険料ゼロでも、ちゃんと保険証がもらえます。
博士が非常に有利、と言ったのは、そういう意味です。
国基準による「コロナ減免」にはいくつかの種類があり、そのうち最も有利なものが適用されることになります。
1 世帯主が実際にコロナに感染し、死亡や重症に陥った場合の条件
この場合、保険料が全額免除となります。コロナ減免全体に言えることですが、国基準ではあくまで世帯主(正確には「主たる生計維持者」)の収入減少となっていることが重要な注意点です。
収入の高い人が世帯主以外の家族の中にいて、それで保険料が高くなっていた場合、その人がコロナ感染したとしても減免対象にはならないということです(※)。
なお、「重症」(正確には「重篤な傷病」)については、一ヶ月以上の治療を要したかどうかで判定されます。診断書や入院期間の証明書などをつけて申請することになりますが、証明書類の細かい取り扱いは市区町村によって若干異なるかも知れませんので、確認してみてください。
※ 市区町村独自に、国基準よりも拡大した減免が実施される可能性もあるので、そのような場合でも役場に相談してみてください。
2 世帯主が、コロナの影響で失業・廃業した場合の3つの条件
世帯主の収入などについて、主に3つの条件があり、これら全てに当てはまる場合にのみ、コロナ減免が受けられます。
なお、こちらも全額免除ですが、世帯主以外の家族に所得がある場合は、その家族の分の保険料は減免されません(按分計算)。
(1)失業・廃業した世帯主の給与収入、事業収入や不動産収入の見込みが、前年よりも30%以上減少している
収入というのは、必要経費や給与所得控除を引く前の、売り上げや支給額のことです。
失業・廃業なら見込み収入ゼロの場合も多いので、条件クリアしやすいでしょう。
なお、世帯主の前年の所得(こちらは必要経費などの控除後)がそもそもゼロ円の場合は、例え収入が減少する見込みでも、減免対象にはなりません。
また、以前に解説した「非自発的失業者の保険料軽減措置」(第30話参照)を受けられる場合は、その対象となる給与収入以外にも減少している収入がある場合にのみ、コロナ減免が受けられます。
(コロナ減免を受けたほうが安くなる場合があるが、それでも非自発軽減優先)
(2)世帯主の前年所得額が、1000万円以下
こちらは所得なので必要経費などを差し引いた後の額です。(1)とは違い、給与や事業に限らず、コロナの影響を受けない年金所得なども判定対象に入ります。 こちらも、1000万を超える人は少ないとは思いますが。
(3)同じく世帯主の、減少が見込まれる所得(つまり給与や事業所得等)以外の前年所得が、400万円以下であること
(2)の所得のうち、収入減少の見込みがない所得の前年額が400万円を超える場合は、トータルの所得が1000万円未満でも減免されないということです。
例えば、給与所得以外に、400万円を超える雑所得(年金所得など)があるとアウトですが、これも比較的少ないケースでしょう。
(前年に自主退職して起業したが、その後コロナで廃業した、などという場合にここで引っかかることがあり得ます。コロナの影響を受けて減ったのは廃業した事業所得だけで、給与所得は関係ない、と考えられるからです)
※ なお、2021年の確定申告(2020年分所得)から、「雑所得」の区分の中に「業務に関するもの」が新設されました。 サラリーマンの副業収入などを想定していますが、「雑所得」として申告した収入はあくまで「事業所得」ではないため、いくら減る見込みでも対象にならないので注意が必要です。 また、前年所得の中に「持続化給付金」などの、事業収入として確定申告した国の補助金が含まれている場合は、その額を除いた額から30%減少しているかどうかで判定されます。 そのため、前年所得がほとんど補助金のみ、という場合は減免不可になることがあります。
何か……複雑なうえに、色々おかしなところがあるような気が。 所得が0なら収入減ってても駄目とか、減免額に関係なく非自発失業減額が優先とか、雑所得で申告したら事業収入にならないとか。
・年金博士
それぞれ理屈はあるのじゃが、こうも複雑だと突っ込みたくはなるな。 なお、まだ3つ目の種類がある。
3 世帯主が失業や廃業したわけではないが、コロナの影響で収入が減少したり、就職が困難な場合の条件。
判定条件は、基本的に2の失業・廃業と同じです。ただ、こちらは全額免除になるとは限らず、前年所得の額(つまり必要経費控除後の額)によって減額率が変わります。
この率については、表を見ていただいたほうが分かりやすいと思います。
(神戸市役所の解説サイト)https://www.city.kobe.lg.jp/a52670/kurashi/support/insurance/coronagenmen.html
複雑な説明をしていただいたんですが、一番大事なところがまだ不明なんですが。 「収入の見込み」っていうのはどうやって出すんですか? あと、「コロナの影響で」というのは、基準はどうなってるんですか?
・年金博士
ところが、そこがどうもあいまいでな……。
収入の見込みと、「コロナの影響」はかなりざっくり
「収入見込み」の算定方法は
厚生労働省の通知によると、「収入見込みは、申請時点までの一定期間の帳簿などから、年間の見通しなどを合理的に出すように」とあいまいにしか書いてありません。
要するには市区町村に丸投げということなので、こればかりは役場に確認するしかありません。
市区町村によっては、次回解説予定の国民年金のコロナ免除と似た方式で見込み額を出しているところもあるようです。
「直近で最も収入額の少なかった月の収入×12」で1年間の見込み額を出すやり方ですが、これは厚労省も文句を言ないでしょう。国民年金のやり方がおかしいと認めることになるからです。
「コロナの影響」とはどのような状況?
同じく厚労省によると、「コロナの影響が直接的・間接的に経済・社会全体に及んでいることを踏まえると、コロナの影響でないことが明らかな場合(懲戒解雇やコロナ以前の離職)を除き、除外するものではない」と官庁お得意のポエムが書いてあります。
要するには、全くコロナと関係ない収入減少であることがはっきりしている場合以外は、減免できるということになります。
後はまた、現場判断ということになるので、失業などに当たってちょっとでもコロナの影響を受けたのであれば、とりあえず役場の窓口で事情を話しておきましょう。
細かく決めた割には、一番重要なところが雑……。
・年金博士
続いて次回は、国民年金のコロナ減免を解説するぞ。
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