(ライター:hashidate amano)
社会保険にも、コロナの救済措置がある
※特例の延長が決定したことにより、2022.8.14に内容を更新しました。
前回までは、国民健康保険と国民年金保険料の、コロナ禍の影響による減免や免除の解説をいただいたわけですが、社会保険(被用者保険+厚生年金)に入ってる僕らには関係ないですよね。
・年金博士
定職があるだけありがたいじゃろう。わしと同じ無職になってからが真のスタートラインじゃよ。
そういうスタートラインには立ちたくないんで……。そもそも博士、自分の意志で上司に辞表を叩きつけて仕事辞めたんですよね。 ……まあ、要するに社会保険の場合は救済策ないってことなんですね。休業とか、業績不振で給与カットってこともあると思うんですけど。
・年金博士
それは早とちりというものじゃ。社会保険にも一応、コロナ特例というのがあるからな。
(博士がおかしなことを言うからそう思ったのに……)
・年金博士
では「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合における、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額の特例改定」について解説しよう。
早口言葉?!
1 コロナの影響による、標準報酬月額の特例改定(随時改定=月額変更届)
社会保険料のもとになる標準報酬月額の決め方
特例の話に入るまでに、社会保険の健康保険(被用者保険)や厚生年金の保険料がどのように決まるかを、簡単におさらいします。
(詳しくは、第24話へ)
月の給与額(報酬月額)に応じて、厚生年金は32等級、健康保険は50等級までのランクごとの「標準報酬月額」というものが決められており、その額に一定の率をかけた額が保険料の額となる。これが保険料の仕組みです。
この保険料を、社員本人と会社側で半分ずつ負担することになります。
「標準報酬月額」は年に一度、9月分から8月分までの新年度分を、4月~6月の3か月間にもらった給与の額をもとに決定するのが基本です(定時決定。「算定基礎届」による)。
しかし、何かの理由で給与が大きく(2等級以上)減少し、その状態が4カ月以上続いた場合は、減少後の給与で再度「標準報酬月額」の算定をやり直すことができます(随時改定。「月額変更届」通称「月変」による)。
(通常の随時改定では、あくまで給与本体が減少していることが条件。残業がなくなって給与が減った、というケースは不可)
コロナの影響で給与が減少した場合の「特例改定」
これが、コロナの影響による休業のために給与が減少(休業手当も給与として扱います)した場合、その4カ月待ちを短縮して、減少した月の翌月から報酬月額の随時改定を行うことができます。
これが今回の「特例改定」と呼ばれるものです。
2等級以上の減少が条件なのは一緒ですが、こちらの特例では給料本体の減少だけに限らず、手当なども込みで給与額が減少していればOKということになっています。
この特例は会社側から年金事務所などに届出を行って適用してもらうことになりますが、適用に当たっては社員本人の書面による同意が必要です。
標準報酬月額を下げると厚生年金の受給額が下がる可能性もあるので、会社側が半額分の負担額を下げるために、本人の意向を無視して特例適用を申請するのを防ぐようになっていると思われます。
・年金博士
なお、この特例は2022年(令和4年)9月支給の給与まで、となっておる。会社が届け出る期限は11月までじゃ。 (同年4月~6月支給の給与が減少した場合は8月末まで、7月支給の給与は9月末までに届け出が必要) 特例期間は何度も延長されておるから、また延びるかも知れんがな。
うーん……どうもこの程度だと、あんまりありがたい感じがしないような。
・年金博士
まあ、高かったままの給料を基に保険料を算定されるよりは良かろう。 わしのように失業したわけではないからな、国民健康保険や国民年金ほどの救済措置がないのは仕方ない。
(就職5日目で辞表を叩きつけた博士、失業と呼べるんだろうか……)
・年金博士
ん? なにか?
2 定時決定(算定基礎届)の特例(2022年度の延長実施が決まりました)
もう1種類の特例がこちらです。
2021年の定期決定(年に一度の標準報酬月額の決定)時に実施されていた特例が、2022年度(令和4年度)の定時決定についても実施されることになりました。
解説1の冒頭で解説した通り、2022年9月から、2023年8月分までの標準報酬月額を定時決定するに当たっては、2022年4月から6月分の給与額で算定するのが原則です。
しかし、2021年6月から2022年5月までの間に、コロナによる休業で給料が下がり、1で解説したコロナの特例による随時改定を受けていた場合(その後に休業が終わって給料が増えたために再び随時改定を受けた場合は除く)は、定時決定時にも特例の適用を受けることができます。
具体的には、2022年4月から6月までの給与で算定した場合の標準報酬月額と、2022年8月分の給与で算定した場合の月額を比較し、2等級以上低くなる場合は、8月分の給与で定時決定を行うことができる、というものです。
(8月の給料がゼロ円の場合は、最低ランクとして算定)
本人の同意書が必要な点や、残業代なども含めた給料の減少でも対象になる点などは、特例改定と同じです。
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