(ライター:hashidate amano)
町なかでよく見かける鍼灸・マッサージ院や、整骨院。腰痛やねん挫などを治すために、施術を受けている人も多いかもしれません。
これらはあくまで病院ではないのですが、症状などによっては健康保険が使える場合もあります。
本来は、いったん施術費の全額を支払ったうえで、後から健康保険に申請して「療養費」の返金を受けることになっているのですが、実際には「委任払」という仕組みが国によって作られているため、多くの場合は3割負担などに当たる額を支払うだけで施術を受けられます。
この記事では、受けた施術がどんな場合に健康保険の適用になるかについて解説します。
また、「委任払」の利用方法についても解説しています。
単なる肩こりでは保険が効かない、はり治療
いつものモ〇スバーガー店内、だが博士の様子がいつもと違う。運ばれてきたスパイシーバーガーに手も付けず、テーブルに突っ伏して苦しんでいる。そこに、ファイヤ君がやってきた。
・年金博士
むぐう……これは痛い、痛くてたまらんぞ。
ど、どうしたんですか博士。救急車を呼びましょうか。
・年金博士
むぐぐう……いや、大丈夫じゃ。いつもの肩こりじゃよ。 12時間以上ぶっ続けでゲームボーイの画面をにらんでいるといつも起こるんじゃむぐぐ。
えええ、今時ゲームボーイですか。しかも12時間ぶっ続けって。なんのゲームをやってたのか知りませんが、果たして電池がもつのか心配です。
・年金博士
さすがにアルカリ電池じゃから、「ときメモ」を12時間ぶっ続けでやったくらいじゃなんともないぜ。 それよりも、問題は肩こりじゃよ。はりを打ってもらえば楽になるんじゃが。
白黒画面でもそういうゲームあるんですね……。とにかく、それならはり打ってもらえばいいじゃないですか。
・年金博士
話はそう簡単ではないのじゃ。単なる肩こりでは、はり治療を受けても保険適用にはならん。自費診療になってしまうからもったいない。
今、その費用ケチってる場合ですか?! というか、はりって保険効くんですね。知りませんでした。
・年金博士
では、今回はその点について説明しようか。むぐぐぐぐ、痛いいたい。
(ここで説明を始める使命感だけはさすがだ……)
はり・灸・あんまなどの保険適用には、医師の指示が必要
はり師、きゅう師、あんま・マッサージ・指圧師による治療行為は、条件を満たせば健康保険の適用対象となります。
はり師、きゅう師、あんま・マッサージ・指圧師による治療(施術)は、条件を満たせば健康保険の適用対象となります。
その条件というのは、以下の通りになっています。
はり・きゅうの場合
医師による治療の効果があまり出ていないなどの理由で、はり・きゅう治療を受けることに医師が同意した場合、保険適用になります。
ただし、対象になる病名は、以下の6種類に限られます。つまり、単なる肩こりなどでは保険は使えません。
神経痛、リウマチ、頚腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症
(神経症やリウマチと同一の範疇と認められる慢性的な疼痛も場合により可)
医師の同意があった場合、「同意書」という書類が発行されるので、初回はそれを持参して鍼灸院などで治療を受けることになります。
(同意の有効期間には限りがあるので、治療が長期に渡る場合は、医師の再同意が必要になる場合もあります)
あんま・マッサージ・指圧の場合
基本的にははり・きゅうと同じで、医師の同意により保険適用となります。
対象になるのは、筋麻痺・関節拘縮に関連する症状で、あんまやマッサージによって関節が動きやすくなったり、筋力が増す見込みがある場合です。
こちらも、単なる疲労回復のマッサージなどでは健康保険は使えません。
「委任払」制度の利用方法
本来は治療用装具(第53話参照)のように、いったん治療費全額を払ったうえで、健康保険に療養費の支給を申請することになっているのですが、「受領委任払」という制度が整備されているため、多くの場合は施術所で治療費の3割(年齢などによって変わります)を払うだけで済みます。
「委任払」の利用に特に複雑な手続きは不要です。病院と同じように保険証を見せたうえで、施術内容などが記載された書類にサインをするだけです。
ただし、まれに委任払制度の対象外となっている施術所があり(※)、その場合は全額負担ということになってしまいますので、最初の施術を受ける前に確認しておきましょう。
(委任払が使える場合、看板などに「各種保険取扱」などと書かれている場合もあります)
※都道府県等との受領委任契約を締結していない場合。
・年金博士
こういうわけじゃ。ただの肩こりではり治療を受けても、保険は使えんのじゃよ。耐えるしかないのじゃ。むぐぐぐぐ、ぽげむう。
それはもはや「ただの肩こり」のレベルじゃないのでは……。やっぱり病院に行ったほうが。
・年金博士
病院に行っても、行いが良くなくせいで体調を崩すのが自分でわかっていた場合は、保険は使えんのじゃよ。国保法第61条の相対的給付制限じゃむぐぐぅお。
(変なところだけ真面目だよなあ……、博士)
接骨院など、保険が使える施術は他にもある
いわゆる「接骨院」や「整骨院」での治療(柔道整復師による施術)も、はり・きゅうなどと同じく委任払の制度があります。
歴史的には、こちらのほうがずっと古くから受領委任払の仕組みが整備されてきましたので、接骨院は病院と同じで普通に健康保険が使える、という感覚の方もおられるかもしれません。
保険の対象になるのは、打撲・捻挫(「肉離れ」も含む)・脱臼・骨折を治療する場合ですが、はり・きゅうなどとは違い、医師の同意が要るのは脱臼・骨折の場合だけとなっています。
(脱臼・骨折でも、応急処置であれば医師の同意が不要の場合もありますが、健康保険側の判断によります。)
単なる肩こりや、疲労回復の場合はやはり保険適用にはなりません。
なお、「整体」や「カイロプラクティック」などでも施術(徒手療法)を行いますが、整体師やカイロプラクターは国家資格ではなく、医療行為ではないとされているので、保険の適用はありません。
業界的には、保険適用の要望は出ているようですが、今のところまだその見込みはないようです。
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